画家の夫アレックス(モーガン・フリーマン)と元教師の妻ルース(ダイアン・キートン)は、米ニューヨークのブルックリンに住んでいる。5階建てアパート最上階の部屋は街を一望でき、日当たりも抜群。センスの良い家具に囲まれ申し分ない。愛犬ドロシーを交えた生活は順風満帆だ。しかし、結婚40年を超えた二人に、最上階までの階段はつらいものだった──。
ベテラン俳優フリーマンとキートンが夫婦役で共演した「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」。ジル・シメント原作「眺めのいい部屋売ります」を、「リチャード三世」(95)のリチャード・ロンクレインが監督した。
日本とこんなに違うアメリカのアパート売買
老夫婦の引っ越し、愛犬の病気、思わぬテロ事件が、ブルックリンを舞台に描かれる。米国でのアパート売却の手続きは、日本と少々異なる。売り主は家に住んだ状態で内覧会を開き、見に来た客がオークションのように入札。売買が成立する。米国ならではの不動産売買の模様が軽妙に描かれる。
一つ残念なのは、フリーマンとキートンを起用するため、原作と違い人種の異なる夫婦に設定したにもかかわらず、その点について踏み込んでいないことだ。1970年代に人種差別を乗り越え結婚し、今まで歩んできた二人のきずな。より深く描くこともできたはずだ。もう一歩踏み込んでほしかった。
ブルックリンを歩く二人。キートンの代表作、ウディ・アレン監督の「アニー・ホール」(77)に重なり感慨深い。80年代ラブコメディーの懐かしさもあり、温かみを感じさせる。フリーマンとキートンのリラックスした演技が楽しめる佳作だ。
「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(2014年、米国)
監督:リチャード・ロンクレイン
出演:モーガン・フリーマン、ダイアン・キートン、シンシア・ニクソン、クレア・バン・ダー・ブーム、コーリー・ジャクソン
2016年1月30日(土)、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。