イスラム教に焦点を絞った国内初の映画祭「イスラーム映画祭2015」が2015年12月12日(土)から18日(金)、東京・渋谷ユーロスペースで開催される。アジアを中心に計9作品を上映。イスラム教徒の価値観、生活に触れる貴重な機会になりそうだ。
オープニング作品は日本公開(12月26日)が決まっている「禁じられた歌声」。世界遺産でもあるアフリカ・マリのティンブクトゥを舞台に、音楽を愛する家族がイスラム過激派の弾圧に苦しみ、抵抗する姿を描く。愛と憎しみを通じ、人間の「赦し(ゆるし)」に迫る。仏セザール賞で7部門を制した。
パキスタン映画「神に誓って」は、本国で興行記録を塗り替えた大ヒット作。パキスタンの原理主義者とリベラル派の対立、米同時多発テロ以降の米国内での反イスラム感情など、さまざまなテーマを骨太に描いた社会派ドラマ。パキスタンでは社会現象に発展するほど注目を集めた。
民族融和への祈り
パレスチナを舞台にした「ガザを飛ぶブタ」は、笑いと涙あふれるコメディー。パレスチナ人漁師がイスラム教徒にとって不浄なブタを引き上げしまい、困ってユダヤ人女性に商売をもちかける。イスラエル人俳優が漁師を、アラブ系チュニジア人女優がユダヤ人を演じ、民族融和への祈りが込められた。
インドネシア映画「カリファーの決断」は、ニカブ(目の部分だけ開いたベール)を身につけることになった女性が主人公。貧しい主人公は生きるために裕福な男と結婚したが、厳格なイスラム教徒の夫の要求に戸惑い、追いつめられていく。
イラン映画「法の書」は、宗教の違いによる家庭内摩擦をユーモラスに描いたコメディー。イラン人男性とフランス人女性が結婚し、戸惑いながらも距離を縮めていく。根底に淡い社会批判も込められているが、検閲の厳しいイランでも公開され、ヒットした。
フランスのモロッコ系親子を描く「長い旅」は、メッカ巡礼がテーマ。移民社会の世代間ギャップを乗り越え、父と子が心を通わせていく。フランスからサウジアラビアへ、7か国を旅するロードムービーでもある。
このほか、マレーシアの故ヤスミン・アフマド監督の「ムアラフ 改心」、宗教の壁に揺れるトルコの恋物語「二つのロザリオ」、砂漠の遊牧民トゥアレグの音楽祭を追ったドキュメンタリー「トンブクトゥのウッドストック」も。いずれも日本ではなかなか触れることのない、イスラム教徒の暮らしと考えを知るきっかけになりそうだ。
「イスラーム映画祭2015」は2015年12月12日(土)から18日(金)、東京・渋谷ユーロスペースで開催。上映スケジュールなど詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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