若手女優の水樹沙羅(島崎遥香)は、女貴族の一生を描いた舞台「鮮血の叫び声」への出演が決まる。配役をめぐり女同士が激しく争う中、小道具の球体関節人形が劇場に持ち込まれ、周囲に異変が巻き起こる──。
ハリウッド映画の経験も生かす
「クロユリ団地」(13)に続き、企画・秋元康と中田秀夫監督が再タッグを組んだ作品。中田監督の19年前のデビュー作「女優霊」(96)を思い出させるホラー映画だ。密室化した劇場内で、呪われた人形が悲劇を招いていく。
「球体関節人形」による恐怖のドラマが、女優同士のし烈な争いと並行して描かれる。アイドル女優の葵(高田里穂)が表と裏の顔を使い分けて主役をつかむ一方、沙羅は実直に役に挑みチャンスをつかむ。そんな二人を虎視眈々と見つめる香織(足立梨花)。彼女たちを手のひらの上で転がす演出家・錦野(小市慢太郎)の存在も興味深い。
劇場スタッフの怪死、女優の転落死、追い詰められる沙羅たち。じわじわ外堀を埋めながら物語は進み、怒涛のクライマックスへ到達する。負の連鎖を断ち切るために立ち上がる沙羅の姿は、ヒット作「リング」(98)の主人公に似ている。人形が正体を現すシーンは中田演出の真骨頂だろう。
「リング」の貞子で世界のホラー映画に影響を与えた中田監督。魂を持った人形が奇怪な動きで人間を襲うなど、ハリウッド映画の経験を生かし、サービス精神にあふれた演出を見せている。デビュー作への原点回帰を感じさせつつ、第一人者の健在ぶりを改めて感じさせる作品だ。
「劇場霊」(2015年、日本)
監督:中田秀夫
出演:島崎遥香、足立梨花、高田里穂、町田啓太、中村育二
2015年11月21日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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