イタリアの北から南まで、高級ホテルや一流レストランを巡る旅。英国ショービジネス界の人気者二人のもとに、文字通り"おいしい"仕事が舞い込む。以前英国の湖水地方を旅して書いたグルメ記事が好評だったので、その第2弾をというわけだ。陽光あふれるイタリアの景勝地、豪華なホテルと美味い料理、そしてアバンチュールも......。断る理由は何もない。一も二もなく引き受けた二人は、黒のミニクーパーを走らせ、イタリア半島縦断の旅へ出る――。
人生を折り返した男たちの哀愁が漂う
主演はスティーブ・クーガンとロブ・ブライドン。ともに英国を代表する俳優でコメディアンである。彼らが本人役で出演する。ジョーク、毒舌、モノマネ。ドライブの間も食事中も、ひっきりなしにしゃべり続ける。ものまね合戦では、マイケル・ケイン、アル・パチーノ、マーロン・ブランドなど、名優たちの声音を競い合い、爆笑を誘う。プライベートでもこんな感じなのだろうか。ぴったり息の合った即興的な掛け合いが楽しい。
お楽しみ満載のイタリア旅行に浮き立つ男たち。中盤まではしゃいだ感じが画面にあふれる。料理が運ばれてくれば「グラッツィエ!」、美味に舌鼓を打っては「ラブリー!」。若い女性とのロマンスもあり、見ているこっちまでウキウキさせられる。
だが、ただ能天気にイタリア観光を楽しむ男たちを描いただけの映画ではない。もともと仕事や私生活に悩みを抱えていた二人。気のおけない親友と愉快な時間を過ごす一方で、自分自身を見つめ直し、本来の自分を取り戻していく。人生を折り返した男たちの哀愁がそこはかとなく漂う。
その姿が見る者の心にしみるのは、彼らの演技が限りなく真実味をたたえているからだ。"フィクション"なのか"リアル"なのか。虚構と現実の境目があいまいなところは、マイケル・ウィンターボトム監督の真骨頂。実生活でも親友同士の俳優を起用したことで、その特徴がより強く出ているのかもしれない。
「イタリアは呼んでいる」(2014年、英国)
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン、ロージー・フェルナー、クレア・キーラン
2015年5月1日(金)、Bunkamuraル・シネマほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。