2015/2/14

映画「娚の一生」/豊川悦司がマイペースの枯れた独身男を好演 上質な大人の恋愛ドラマ

西炯子(けいこ)の同名人気漫画を「余命一か月の花嫁」(09)の廣木隆一監督が映画化した「「娚(おとこ)の一生」」。主演の榮倉奈々は5年ぶり、豊川悦司は8年ぶりに監督と組んだ作品だ。共演の向井理も「きいろいぞう」(13)に続く廣木作品出演となる。

映画はつぐみの幼少期から幕を開ける。田舎の一軒家で染物工房を営むつぐみの祖母・十和の元へ、男子学生が訪ねてくる。十和がぐずるつぐみをおいて染物を干していると、後ろから学生が彼女を優しく抱きしめ、十和も彼を受け入れる。時代は移り変わり、大人になったつぐみ(榮倉奈々)は東京での仕事と恋に疲れ、田舎に戻って十和と一緒に暮らしていた。

親子ほど年の離れた男女の奇妙な同居

ところが十和が急逝してしまう。つぐみだけの寂しい生活になるはずだったが、葬儀の翌朝、白髪交じりの中年男が玄関にいた。男は「十和の教え子で大学教授の海江田醇(豊川悦司)」と名乗る。「生前の十和から合鍵をもらい、昨夜から離れで泊まっていた」と言う。親子ほど年の離れた男女の奇妙な同居が始まった。

「祖母の知り合い」というだけで、勝手に居候を始めた海江田は、食事も風呂も洗濯もつぐみに任せっきり。厚かましくずけずけと物を言う中年独身男だ。つぐみはあからさまな嫌悪感を見せるが、微妙な空気と距離感が続いた同居は、やがて強引な海江田のプロポーズで恋愛へ発展。そこへつぐみの元恋人の中川(向井理)が現れる──。

「娚の一生」は"足キス""床ドン""枯れ専"と言った流行のキーワードが注目されているが、恋愛物を得意とする廣木監督らしい作品だ。静かな時間の流れの中、愛を育む大人の関係をしっとり描く。原作者も太鼓判を押した豊川がいい。若い時のぎらつきが取れ、マイペースの枯れた独身男を淡々と演じる。大胆な言葉と行動でつぐみを困らせ、時に優しく包み込み、大人の男のフェロモンを放つ。5年ぶりの廣木作品で榮倉も演技的な飛躍を見せている。

田舎の一軒家を舞台にしたドラマは「きいろいぞう」と同じ設定だ。くすりとさせられる台詞や動的なリアクションで物語に変化を作っていく。幻想的な京都の竹林デート、浮遊感あふれるクラシックカーでのドライブ、自転車の二人乗り。距離感が縮まる過程を自然に、観客の視覚に訴えて演出する。初共演の榮倉と豊川の好演も合わさり、上質な大人の恋愛ドラマに仕上がった。


「娚の一生」(2015年、日本)

監督:廣木隆一
出演:榮倉奈々、豊川悦司、向井理、安藤サクラ、前野朋哉
2015年2月14日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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