染谷将太と前田敦子が共演した「さよなら歌舞伎町」(廣木隆一監督)で、風俗業に身を投じる韓国人留学生を演じた女優、イ・ウンウに話を聞いた。
新宿・歌舞伎町のラブホテルを舞台に、男女5組の愛と人生を描く群像劇。染谷将太演じるホテルの店長は、東北の実家には一流ホテルに就職したとうそをついている。同せい中の歌手志望の恋人を演じるのは、「もらとりあむタマ子」(13)が好評だった前田敦子。さらにホテルを"仕事場"にしているのが、イ・ウンウ演じる風俗嬢だ。故郷に帰ってブティックを開く夢をもつ韓国人留学生で、一緒に暮らす韓国人の恋人がいる役どころ。
イ・ウンウは昨年、キム・ギドク監督の「メビウス」(12月6日から日本公開)に出演してその名を知られるようになった。「メビウス」では夫の浮気をきっかけに狂気に陥る女を熱演したが、本作では風俗のバイトをしながら恋人に健気に尽くす留学生役。まったく別の顔を見せた。初めての日本訪問で、1カ月間日本語と格闘しながら撮影に向き合ったという。
差別につながるのではないかと少し心配もあった
──上映後、目を潤ませていたが、どんな思いで完成した映画を見たのですか。
完成した映画を見たのは初めて。ラストシーンが終わった時、波のように押し寄せてくる思いがあった。監督が温かい人だというのはこれまでも感じていたが、映画を見てそれを再確認した。シナリオを読んだときは、何人もの俳優のエピソードが続くので写真を1枚1枚見ているような感覚だったが、映画になったとき各エピソードがすべてつながり、映画は生きていると感じさせられた。シナリオ(荒井晴彦)と廣木監督の演出が素晴らしく合っていると思った。
──出演依頼を受けたときの感想を教えてください。また、撮影のエピソードは。
「メビウス」に続いて、濡れ場がある役なので迷った。女優は演技そのものよりも脱いだことが注目を集めてしまうから......。撮影でも監督に「なるべく裸体が見えないように撮ってほしい」と頼んでみたが「大事なシーンだから」と説得された。シナリオと監督を信じようと思った。ベッドシーンでは、共演の村上淳さんが場をなごませてくれたおかげで緊張が解けた。
──風俗嬢を演じることに抵抗はありませんでしたか。
仕事に差はないと、個人的には思う。でも、見た人が韓国人留学生がみんなこういうバイトをしていると思い、差別につながるのではないかと少し心配もあった。
──日本語が自然でしたね。練習はされたのでしょうか。
日本語はできなかったので、韓国で日本人教師について勉強した。相手役のセリフをすべて覚えて練習したので、撮影では会話がスムーズに進んだ。
「さよなら歌舞伎町」(2014年、日本)
監督:廣木隆一
出演:染谷将太、前田敦子、イ・ウンウ、ロイ、樋口明日香
2015年1月24日(土)、テアトル新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。