白昼のスペイン・マドリード、ブエルタ・デル・ソル広場。職を失ったホセ(ウーゴ・シルバ)は仲間4人と共に、大道芸人に扮して宝石店強盗を決行した。奪ったのは金の指輪2万5000個。駆け付けた警察が仲間1人を射殺、2人を逮捕。大混乱の中、ホセは幼い息子セルジオと仲間アンソニー(マリオ・カサス)とタクシーを襲って逃走する。追手をかわしつつたどり着いたのは、食欲旺盛な魔女がひそむ村だった──。
予定調和と正反対の攻撃性 ハイテンションで規格外の演出に圧倒
スペインのアカデミー賞「ゴヤ賞」8部門を制したアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の新作「スガラムルディの魔女」。予測不可能なホラー・コメディーだ。強盗計画の失敗から狂い始める主人公たちの行動は、行きあたりばったりの逃走劇に発展し、無関係のタクシー運転手と乗客を巻き込んでいく。タクシーはパトカーとカーチェイスを続け、親子3代続く魔女がすむ「スガラムルディ」へ。
銃撃戦にカーチェイスとアクション映画のような幕開けから、村に入った後は一気にホラー色が強まる。男が支配する現実社会に不満な魔女たちは、世界への復讐を画策。村に迷い込んだ男たちをしばり上げ、夕食の材料にする。魔女伝説をふくらませた物語だ。
古典ホラー「悪魔のいけにえ」(74)など、多くのホラー映画で女性が男性殺人鬼の餌食となってきた。今回は逆に男が苦しむ。晩餐の席で椅子にしばられ、魔女にいたぶられる男たち。「悪魔のいけにえ」のパロディーにもみえる。ホセたちを追って妻、刑事2人も村に到着。人食い魔女の儀式に巻き込まれる。
宝石店強盗から始まった物語は、行き先不明のまま突っ走っていく。戦りつと笑いが同居する演出は観客の予想を超える。勢いは最後まで衰えず、ついにエキストラを大量動員したクライマックスへ。悪趣味極まりないエンディングまで、ハイテンションで規格外の演出に圧倒される。予定調和と正反対の攻撃性。「鬼才」イグレシア監督の才能を堪能せよ!
「スガラムルディの魔女」(2013年、スペイン)
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:ウーゴ・シルバ、マリオ・カサス、カルメン・マウラ、カロリーナ・バング、ジェイミー・オルドネス
2014年11月22日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。