ハリウッドを代表するアクション俳優、アーノルド・シュワルツェネッガー。「ターミネーター」(84)のジェームズ・キャメロンらそうそうたる監督と組んできた彼が、最新作で指名したのがデビッド・エアーだ。ロスを舞台に警官ドラマを主観映像で描く「エンド・オブ・ウォッチ」(12)を見て、監督に声をかけたという。
二面性が与えられたシュワルツェネッガー
冒頭からシュワルツェネッガーは過去にない役作りを見せる。五分刈りの白髪頭。首に大きな刺青。老け込んだ外見にまず驚かされる。男はテレビを見ている。覆面犯人に拷問される女が映っている。シュワルツェネッガー演じる男、ジョン・ウーォトンは画面を見ながら苦悶の表情を見せる。短いカットの幕開けは、のちのドラマの重要な糸口になる。
8か月後。麻薬取締局を率いるウォートンは、犯罪組織摘発で大きな功績を上げてきた。密売組織の味とを奇襲するため、部下を率いて乗り込むウォートン。手際よく敵を抑えるが、組織の隠し金1000万ドルが現場から消え、ウォートンのチームのメンバーの命が狙われる──。
エアーは 「トレーニングデイ」(01)、「S.W.A.T.」(03)などの脚本を書いた後、犯罪映画「バッドタイム」(05、日本未公開)で初メガホンを取った。正面からではなく、裏からリアルな警官たちを描いてきた。今回は麻薬取締局の特殊部隊が主役となる。
ドラマは二転三転する。容疑者、被害者が入り乱れ、立場は逆転し、殺人事件が推理劇へ発展していく。死の恐怖、疑心暗鬼と人間心理をうまく取り込み、ウォートンと女性捜査官の犯人探しが進行する。
エアーは「トレーニングデイ」でデンゼル・ワシントンのクリーンなイメージを返上し、悪役をあてて新たな一面を引き出し、米アカデミー主演男優賞獲得につなげた。今回はシュワルツェネッガーに二面性を与え、キャラクターを複雑にしている。観客が持つイメージを逆手に取ることで、異色のアクションドラマが仕上がった。
「サボタージュ」(2014年、米国)
監督:デビッド・エアー
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、サム・ワーシントン、オリビア・ウィリアムズ、テレンス・ハワード、ジョー・マンガニエロ
2014年11月7日(金)、TOHOシネマズみゆき座ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。