2014/10/15

映画「泣く男」/チャン・ドンゴン主演 鍛えぬかれた体と俊敏なアクション

ウォンビン主演のハードボイルド・アクション「アジョシ」(10)を韓国で大ヒットさせたイ・ジョンボム監督が、韓流スターのチャン・ドンゴン主演で放つ「泣く男」。冷酷な殺し屋が少女を誤殺し、贖罪(しょくざい)のため戦いに身を投じる物語だ。

幼い頃に親に捨てられ、中華系組織に殺し屋として育てられたゴン(チャン・ドンゴン)。米国で任務遂行中に、誤ってターゲットの幼い娘まで殺してしまう。虚脱感にとらわれ姿をくらますゴンだが、組織は少女の母モギョン(キム・ミニ)の暗殺を命じる。ゴンはモギョンを追い、祖国の韓国へ向かう──。

米国で射撃訓練も受けた

ゴンは複雑なキャラクターだ。冒頭は非情な殺し屋として颯爽と登場。あっという間に標的をとらえ、難なく任務をこなすが、一瞬の判断ミスで標的の娘まで撃ってしまう。ゴンは罪悪感で現実逃避し、酒におぼれる。一方、夫と娘を一度に亡くしたモギョンは喪失感から酒と薬におぼれていた。二人は組織の非情な命令で交差する。

濃密なドラマとハードアクションで展開する「泣く男」には、韓国アクション映画が新次元へ突入した印象を受ける。非情な殺し屋ゴンは、自分のミスで苦しむモギョンに接するうち、組織の命令に背いて彼女を守り始める。ゴンの裏切りを知った組織は新たな刺客を放ち、壮絶な死闘が展開する。

死闘の舞台はモギョンが隠れた団地。撃ち合いは室内から屋外へ広がり、白昼の銃撃戦になだれ込む。マイケル・マン監督の「ヒート」(95)のごとく、乾いた銃声が響き渡る。チャン・ドンゴンは撮影5か月前にトレーニングを始め、米国で射撃訓練も受けたという。鍛えぬかれた体と俊敏なアクション、複雑な感情を合わせ持った殺し屋役は、これまでのイメージを覆す。

罪悪感、償い、あがない──良心の呵責に苦しむ過程を濃密に描きながら、最終的にゴンが下す決定とは。男の美学と生きざまを感じるとともに、沸点を超えたダイナミックなアクションが融合。韓国映画の力作である。


「泣く男」(2014年、韓国)

監督:イ・ジョンボム
出演:チャン・ドンゴン、キム・ミニ、ブライアン・ティー、キム・ジュンソン、キム・ヒウォン
2014年10月18日(土)、新宿バルト9、丸の内TOEIほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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