生きるべきか、旅立つべきか──。事故で生死の境をさまよう17歳の少女が、人生の「分岐点」で決断を迫られる「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」。世界34か国で翻訳されたベストセラー小説を、主人公と同年齢のクロエ・グレース・モレッツ主演で描く。
当たり前だった日常の尊さを再認識
ミアは高校3年生。元ミュージシャンの両親、年の離れた弟と仲良く暮らしている。将来の夢はチェロ奏者。名門ジュリアード音楽院を目指し、日々練習に励んでいた。人気バンドで歌う恋人とは交際1年。親友にも恵まれ、充実した日々と送っている。
しかし、ある冬の日、一家を悲劇が襲う。車で出かけた家族4人は、対向車に突っ込まれて大事故に。ミアは愛する両親、弟を一瞬で失った。意識を失い病院のベッドに横たわるミアを、傍らに立って「眺めている」もう一人の自分がいた。病院に駆けつける恋人と親友。瀕死の自分を見つめながら、ミアは取り乱す。静かに見守る祖父は「つらいならもう頑張らなくていい」と、昏睡状態のミアに語りかける──。
「キック・アス」で注目を浴びたモレッツ。十代のみずみずしさを最大限に引き出した作品だ。卓越した音楽の才能がありながら、どこか自信がなく、引っ込み思案な少女。恋人ができ、家族に背中を押され、一歩ずつゆっくり歩き出した途端、事故がすべてをさらってしまう。モレッツが役と一体化し、揺れる17歳を繊細に、大胆に演じている。
青春映画として走り出した物語は、中盤からファンタジー色を強めていく。瀕死の自分の体を抜け出し、ミアの精神は事故後の世界を見つめる。死んでしまった家族、動揺する恋人や友人を目の当たりにし、当たり前だった日常の尊さを再認識する。祖父のかけたひとことに、観客もそれぞれの「決断」を迫られるだろう。
成長の痛み、生きることの難しさ、死の残酷さ。柔らかくはかない少女の目を通し、生への賛歌を歌い上げている。
「イフ・アイ・ステイ 愛が還る場所」(2014年、米国)
監督:R・J・カトラー
出演:クロエ・グレース・モレッツ、ミレイユ・イーノス、ジョシュア・レナード、ステイシー・キーチ
2014年10月11日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。