2014/9/25

映画「ジェラシー」/嫉妬が愛をむしばんでいくプロセスが息苦しいほどリアル

うだつの上がらない舞台俳優のルイと、同じく売れない俳優のクローディア。二人は古いアパルトマンで同棲生活を送っている。ルイは結婚して幼い娘もいたが、クローディアと恋仲となり、家庭を捨てたのだ。

「出て行かないで」と泣きながら懇願する妻を顧みず、恋人のもとへと走ったルイ。だが、そこに待っていたのは、温もりや安らぎなどは無縁な、猜疑心と嫉妬の日々だった――。

恋愛の喜びは少なく、苦しみばかりが目立つ

二人の住処(すみか)は、明かり採りの窓が2つ付いているだけの、みすぼらしい屋根裏部屋。クローディアはこの部屋で暮らすことへの不満を、ルイにぶちまける。しかも、ルイに仕事が入ると、疑心暗鬼となり、猛烈な嫉妬心を燃やす。

クローディアは自分も仕事を得ようと、積極的に有力者に働きかけ、パトロンを見つける。すると今度はルイの心に嫉妬心が芽生える。ともに相手への執着心を抱きながらも、すきをうかがっては相手を出し抜こうとする。ばれなければ浮気さえする。エゴイズムのかたまりである。

こんな二人が恋を成就できるわけもなく、しだいに破局の予感が漂い始める。男女の恋愛を描いた作品ではあるが、恋愛の喜びは少なく、苦しみばかりが目立つ。果たしてどんなラストが用意されているのか――。

ヌーベル・バーグ後の仏映画界を代表する監督の一人、フィリップ・ガレルの新作「ジェラシー」。過去の作品の多くは自伝的性格が強かったが、今回ルイのモデルはガレルの実父である。演じるのはガレルの息子、ルイ・ガレル。また、娘のエステル・ガレルが、ルイの妹役で出演している。

ガレルが焦点を絞ったのは、恋愛に潜む破滅的衝動としての嫉妬心。愛が嫉妬を育み、嫉妬が愛をむしばんでいくプロセスが、息苦しいほどのリアリズムで描かれる。ゴダールの「男性・女性」(65)、スコリモフスキの「出発」(67)で知られるカメラマン、ウィリー・クランのモノクロ映像が美しい。


「ジェラシー」(2013年、フランス)

監督:フィリップ・ガレル
出演:ルイ・ガレル、アナ・ムグラリス、レベッカ・コンヴェナン、オルガ・ミシュタン、エステル・ガレル
2014年9月27日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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