2014/9/ 5

映画「ある優しき殺人者の記録」/なぜ18人も殺害したのか―。指名手配犯はひとりのジャーナリストに語り出す

韓国の障害者施設から連続殺人事件の指名手配犯パク・サンジュン(ヨン・ジェウク)が脱走した。「独占取材してくれ」と呼び出された女性ジャーナリストのキム・ソヨン(キム・コッピ)は、日本人カメラマンの田代(白石晃士)とインタビューに向かう。廃墟となった密室マンションでの告白。なぜ18人も殺害したのか。サンジュンとソヨンの因縁。新たな惨劇──。

主観映像で86分ワンカット

監督、脚本、撮影の白石晃士は、P.O.V(ポイント・オブ・ビュー=主観映像)を使ったホラー&オカルト系フェイク・ドキュメンタリーの第一人者だ。オリジナルビデオ作品も多く、「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズが大ヒット。今年劇場版も作られた。純正ホラー映画「テケテケ」(09)、サディスティックな「グロテスク」(09)など作品の幅は広い。

韓国オールロケ撮影の「ある優しき殺人者の記録」。18人の殺人には理由があり、独自理論に基づいていたことが分かってくる。なぜソヨンと田代がサンジュンに指名されたのか。現場にはサンジュンの予告通り、日本人カップルのつかさ(蒼つかさ)と亮太郎(米村亮太朗)も登場。密室での不条理な惨劇に発展する。

反社会的な殺人を暴力的に描きつつ、ざんげと輪廻転生を裏に忍ばせる。サンジュンとソヨンのつらい記憶もからむ。サンジュンにとって、殺人は崇高な儀式にみえる。マンションには儀式に必要な人たちが集められた。しかし、客観的にはサンジュンは狂った殺人者だ。殺そうとする者と、生きようとする者。葛藤と駆け引きがドラマのポイントとなる。

主観映像で86分ワンカット。男女の愛がエロス、サディズム、緊張感、笑いが同居する中で描かれる。滑稽な演出が冴えわたる。独自の作風で異彩を放つ白石監督が、従来のホラーやオカルトとひと味違うアプローチで繰り出す衝撃的な作品だ。


「ある優しき殺人者の記録」(2014年、日本)

監督:白石晃士
出演:ヨン・ジェウク、キム・コッピ、葵つかさ、米村亮太朗
2014年9月6日(土)、全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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