2014/8/19

映画「プロミスト・ランド」/米シェールガス開発の裏を描く社会派ドラマ 岐路に立たされるエリートをマット・デイモンが好演

米アカデミー賞で脚本賞、助演男優賞(ロビン・ウィリアムズ)の2部門を制した「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」主演のマット・デイモンとガス・バン・サント監督が、再びタッグを組んだ「プロミスト・ランド」。米シェールガス開発の裏を描く社会派ドラマだ。

うまい話に農民たちは転がされエリートの踏み台になっていく

大手エネルギー開発企業のエリート社員、スティーブ(デイモン)。地方のシェールガス埋蔵地へ赴き、地権者の農場主から掘削権を借り上げるのが仕事だった。農業地帯出身の強みを生かし、農民たちの懐に飛び込んで契約を次々と獲得。とんとん拍子に幹部候補生まで出世した。

ある日、スティーブは同僚のスー(フランシス・マクドーマンド)と田舎町・マッキンリーへ向かう。低収入にあえぐ農民たちは二人の話に熱心に耳を傾け、好意的に受け入れる。町の実力者に賄賂も渡し、周到な根回しの末に開かれた町民集会。そこで思わぬハプニングが起きる。元科学者で高校教師のフランク(ハル・ホルブルック)が「環境調査が十分に行われていない」と発言。採掘計画に異議を申し立てたのだ。

さらに、町には突然環境活動家のダスティン(ジョン・クラシンスキー)が現れ、シェールガス開発の悪影響を唱え始める。企業による搾取と欺瞞を訴えるダスティンの話にうなずき、農民たちの心は離れていく。状況が明らかに不利となる中、衝撃の事実がスティーブを襲う──。

今は旬のシェールガス採掘をテーマに、資源開発をめぐる光と影をサスペンス・タッチで描く。デイモン演じるエリート社員の手法は、いかにも周到で抜け目がない。貧しい農民の足元を見つつ、「夢ある未来」を吹聴して人心を掌握する。うまい話に農民たちは簡単に転がされ、土地を差し出し、エリートの踏み台になっていく。

鼻白むほどの手際の良さだが、終盤に明かされる衝撃の事実が、スティーブの価値観を根底から揺るがす。順風満帆のエリートが岐路に立たされ、「何が正しいか」を自問し、仕事への信念や情熱と向き合うことになる。脚本は出演も兼ねたデイモンとクランスキーが共同で執筆。ガス・バン・サント監督が誠実で手堅い社会派ドラマに仕上げている。


「プロミスト・ランド」(2012年、米国)

監督:ガス・バン・サント
出演:マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、ローズマリー・デウィット、スクート・マクネイリー
2014年8月22日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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