2014/7/ 4

映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」/開戦5分でトム・クルーズが死亡 異例づくしの幕開けに引き込まれる

桜坂洋の小説をハリウッドが映画化した「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。主演はトム・クルーズとエミリー・ブラント、監督は「ボーン・アイデンティティー」(02)のダグ・ライマン。夢のSFアクション大作だ。

謎の生命体・ギタイの攻撃で滅亡寸前の地球。米軍広報官のケイジ少佐(クルーズ)は上官の命令に背き、米軍が駐屯する英ヒースロー空港に送り込まれる。翌朝、最前線で"ギタイ殲滅作戦"に投入され、右も左も分からないまま開戦5分で戦死する──。

ハリウッドのスーパースター、クルーズ主演作としては異例づくしの幕開けだ。ケイジは「臆病な卑怯」な屈辱的役どころ。そのうえ開始後まもなく戦死してしまう。しかし驚くべきはその先。死んだケイジが目覚めると「死の前日のヒースロー空港」に戻っていた。前日とまったく同じ会話、状況が展開していく。ケイジは困惑しながら、再び最前線で戦死。この過程が繰り返される。ケイジは「タイムループ」の無限地獄に陥ったのだ。

展開はゲーム風だ。プレーヤーがゲーム中に死に、リセットして再びプレー。繰り返すごとに少しずつ段階を上げていく。主人公が死ぬとそれまでの出来事は帳消しになり、またスタートラインからやり直し。一方、女性兵士のリタ(エミリー・ブラント)も、過去に同様の経験をしていた。ケイジは助言を受けながら強くなり、部隊の運命を一身に担うようになる。

臆病で卑怯な主人公の成長物語

"タイムループ映画"はこれまでも多く作られてきた。実写やアニメの「時をかける少女」。恋人の事故死を防ぐ「タイムマシン」(02)。8分間のタイムループで列車爆破犯を探す「ミッション 8ミニッツ」(11)。着想に新味はない。

しかし、人間とエイリアンが対決する戦争アクションにしたこと、臆病で卑怯な主人公の成長物語にしたことが独自色になった。クルーズも好演。共感を呼ぶキャラクターで、成長過程にリタへの愛を含ませた点がうまい。

「エイリアン2」(86)にも出たビル・パクストンの出演シーンは、同作へのオマージュも感じさせる。名作の要素を取り入れつつ、大迫力のアクションでたたみかける。ゲーム感覚で命が軽んじられたきらいはあるが、幕引きもひねりが効いており、見ごたえ十分な大作だ。


「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(2014年、米国)

監督:ダグ・リーマン
出演:トム・クルーズ、エミリー・ブラント、ビル・パクストン、ブレンダン・グリーソン、ノア・テイラー
2014年7月4日、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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