2014/6/20

映画「サード・パーソン」/3都市3組の男女の物語 作り込み過ぎ感はあるが群像劇として見ごたえ十分

パリ、ローマ、ニューヨーク。三つの都市の3組の男女。異なるエピソードはやがて交差し、隠された真実が浮かび上がる。デビュー作「クラッシュ」(04)で米アカデミー作品賞、脚本賞を獲得したポール・ハギス監督最新作だ。

パリでは作家が、ローマではビジネスマンが、NYでは三流女優が

パリ。米ピュリッツァー賞作家のマイケル(リーアム・ニーソン)は、ホテルにこもり新作を書いている。部屋を訪れた若い愛人アンナ(オリビア・ワイルド)は作家志望。文章を書くことでつながる二人だが、互いに秘密も持っている。

ローマ。米国人ビジネスマンのスコット(エイドリアン・ブロディ)は、バーで先住民族ロマの女性モニカ(モラン・アティアス)に出会う。モニカの娘は犯罪組織に拉致されていた。スコットは母子を助けようとするが、モニカは何かを隠しているようだ。

ニューヨーク。三流女優のジュリア(ミラ・クニス)は、元夫のリック(ジェームズ・フランコ)と息子の親権を争っている。経済的にも困窮し、息子にも会わせてもらえず、ジュリアの生活は乱れる。精神も崩壊寸前だった──。

三つのエピソード、6人の登場人物は、せっぱ詰まっていながら、どこかうさん臭い。たとえば作家の愛人アンナには別の男がいる。娘を探すアンナの話は、茶番めいている。絶妙なうその気配が、謎解きのエッセンスになっている。

クリント・イーストウッド監督作「ミリオンダラー・ベイビー」(04)、「父親たちの星条旗」(06)、「硫黄島からの手紙」(06)など、脚本家としても高く評価されているハギス監督。今回も巧みな構成、練り上げられた脚本が光る。入り組んだ人間関係の秘密が、糸をほどくように明かされる。

ニーソン、ブロディ、フランコと芸達者がそろい、演技も申し分ない。しかし、三つのエピソードをつなげる意図が優先され、エピソードも作り込み過ぎた感がある。すべての人間関係に閉塞感があり、憂鬱な気分がぬぐえない。とはいえ、語り口は巧み。上等の群像劇として見ごたえ十分だ。


「サード・パーソン」(2013年、英国)

監督:ポール・ハギス
出演:リーアム・ニーソン、ミラ・クニス、エイドリアン・ブロディ、オリビア・ワイルド、ジェームズ・フランコ、モラン・アティアス
2014年6月20日(金)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。TOHOシネマズ 日本橋ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

人気キーワードHOT

特集SPECIAL

ランキング RANKING