冬のロンドン裏通り。ジョゼフ(ジェイソン・ステイサム)はホームレスの集団に混じり、段ボールで寒さをしのいでいた。唯一心通わせる相手は少女イザベルだ。ところがある夜、犯罪組織がホームレスを襲撃。イザベルの行方が分からなくなる。
襲撃から逃れたジョゼフは、高級マンションの一室に逃げ込んだ。部屋の主は朝になっても戻らない。留守電には「10月まで出張」のメッセージが残っていた。ジョゼフは部屋の主になりすまし、イザベルを探すと決める。
イザベルが遺体で見つかった
ジョゼフは英軍の元特殊部隊員だった。アフガニスタンで罪を犯し拘束されるが、軍法会議前に逃亡。ロンドンに身を潜めていた。イザベルの身を案じたジョゼフは、酒と薬にまみれた生活をやめると決意。ボランティアのシスター・クリスティナ(アガタ・ブゼク)の助けを借り動き始めるが、「イザベルが遺体で見つかった」と連絡が入る──。
ステイサム主演の犯罪アクション「ハミングバード」。タイトルは軍の無人偵察機を意味する。戦場で兵士を絶え間なく追いかける無人機。ジョゼフは軍による監視への恐怖、過酷な戦いの記憶に悩み、心を病んでいた。いわば「傷ついた帰還兵の再生」を描く犯罪アクションだ。
軍からも世間からも"脱走中"のジョゼフが、高級アパートの住人になりすまし、イザベルの行方を探す。援護するのは敬虔なキリスト教徒のシスター・クリスティナだ。イザベルともシスターとも、恋愛関係にはない。微妙な距離と心理が、観客の想像力を刺激する。
ステイサム得意の本格アクションも健在だ。特殊効果に頼らず、一対一の"肉弾戦"は見ごたえ十分。シスター演じるブゼクも、静かなたたずまいが印象に残る。監督はデビッド・クローネンバーグ監督作「イースタン・プロミス」(07)の脚本を書いたスティーブン・ナイト。ロンドンの闇夜、帰還兵の心の闇をうまく重ねている。
「ハミングバード」(2012年、英国)
監督・脚本:スティーブン・ナイト
出演:ジェイソン・ステイサム、アガタ・ブゼク、ヴィッキー・マクルア、ベネディクト・ウォン、ジャー・ライアン、ダイ・ブラッドレイ
2014年6月7日(土)新宿バルト9ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。