2014/5/23

映画「マンデラ 自由への長い道」/2時間27分でも短すぎる マンデラの波乱に満ちた人生を描く重厚な作品

南アフリカ元大統領、ネルソン・マンデラ。アパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃に生涯を捧げ、昨年95年の人生に幕を閉じた。「マンデラ 自由への長い道」はその自伝をベースに、若き日から闘争に身を投じた経緯、獄中生活、家族関係などを追った作品だ。

95年のいわばダイジェスト版

第二次世界大戦後のヨハネスブルグ。若き敏腕弁護士のマンデラ(イドリス・エルバ)は、黒人の権利保護に奔走していた。しかし、繰り返される理不尽を前に、武装闘争への突入を決意。仲間とともに軍事組織を結成するが1962年に逮捕される。2年後、国家反逆罪で終身刑判決が出され、長き獄中生活に入る。

塀の外では妻・ウィニー(ナオミ・ハリス)が二人の娘と暮らしていた。自らも黒人支援活動に身を投じ、何度も投獄されながら、夫を信じ、希望を捨てず帰りを待つウィニー。"マンデラの妻"として運動のシンボルとなり、存在感を増していく。

一方、国際社会に反アパルトヘイトの風が吹き始める。各国で抗議活動、南アフリカ製品の不買運動が拡大。圧力を受けた白人大統領のデクラークは、民族融和へ舵を切っていく。獄中のマンデラは交渉相手となり、妥協せず自由への道を模索していく──。

20世紀で最も偉大な指導者の一人、マンデラ。長く波乱に満ちた人生を描くには、2時間27分でも短すぎる。生い立ちから結婚、闘争に入った経緯、投獄と釈放、初の黒人政権誕生。妻ウィニーとの確執、子供への思い、家族との関係。95年の人生のいわばダイジェスト版といえる。

史実に忠実に描かれている分、映画的ダイナミズムに欠けた感は否めない。一人の人間として、マンデラを支えたものは何だったのか。白人政権打倒を目指した男が、なぜ憎しみの連鎖を断ち切れたのか。その素顔をより深く知るため、入り口として最適な作品かもしれない。


「マンデラ 自由への長い道」(2013年、米国)

監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:イドリス・エルバ、ナオミ・ハリス、トニー・キゴロギ
2014年5月24日(土)、全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

人気キーワードHOT

特集SPECIAL