2014/4/16

映画「レイルウェイ 運命の旅路」/あまりの厳しさに記憶を封じ込め、捕虜仲間にしか語らなかった元捕虜のノンフィクション

鉄道好きな初老のエリック(コリン・ファース)は、列車で美しいパトリシア(ニコール・キッドマン)と乗り合わせ、恋に落ちる。愛を育み結婚した二人だったが、幸せは長く続かない。エリックは夜ごと悪夢にうなされていた。

 

エリックを苦しめるのは、数十年前、遠くインドシナ半島での記憶だった。当時21歳。英軍将校として第二次世界大戦に従軍し、ジャングルで苦戦を強いられ、日本軍の捕虜となった。エリックを含め連合軍の捕虜は、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道建設に駆り出された。

 

過酷な労働、ひどい扱い。中でも日本軍通訳の永瀬(真田広之)の仕打ちは、エリックの心に消せない傷を残していた。数十年後の今、そんな永瀬がタイで生きており、寺院で戦争体験を伝えていると知る。自分を苦しめた男が、「戦争の生き証人」として現地に暮らしている。

 

すべてを忘れたいと思いながら、心の傷を刺激され、動揺するエリック。しかし、献身的に自分を支えるパトリシアを前に、過去の傷と決別するため、永瀬に会うことを決める。単身タイへ向かったエリックは、彼に何を語るのか──。

「贖罪」のため現地に残った日本人

 

第二次世界大戦中、泰緬鉄道建設で強制労働させられた英国人捕虜。捕虜たちを虐げ、心身ともに傷めつけながら、「贖罪」のため現地に残った日本人。「レイルウェイ 運命の旅路」は、数十年を経て両者が和解に向かう物語だ。

 

原作はエリック・ローマクスの自叙伝。自身の体験をもとに書かれたノンフィクションだ。泰緬鉄道建設の物語は、米映画「戦場にかける橋」(57、デビッド・リーン監督)でも描かれたが、実際はさらに過酷だったという。あまりの厳しさに記憶を封じ込め、捕虜仲間にしか語らなかったという痛み。ローマクスは前に進むため、あえて過去に向き合いタイへ赴いた。

 

それぞれが過去を乗り越えなければ、真の和解は果たされない。簡単で難しい作業の過程を、映画は淡々と描いていく。同時に加害者だった日本に暮らす私たちは今、何をすべきなのか、正面から問いかける物語でもある。


「レイルウェイ 運命の旅路」(2013年、豪・英)
監督:ジョナサン・テプリツキー
出演:コリン・ファース、真田広之、ニコール・キッドマン、ステラン・スカルスガルド、ジェレミー・アーバイン
2014年4月19日(土)、角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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