2014/4/12

「ジャック・タチ映画祭」/仏風刺喜劇の名手13作品一挙上映 辛らつな文明批判、笑いとともに

 帽子にレインコートに雨傘、パイプ。ジャック・タチ監督「ぼくの伯父さん」(58)の主人公・ユロ氏は、タチ作品の代表的キャラクターだ。2014年4月12日開幕する「ジャック・タチ映画祭」は、フランス風刺喜劇の名手、タチの監督・出演13作品をデジタルリマスター版で一挙上映する。

「プレイタイム」はタチ映画の一つの到達点

 

タチの映画は"ユロ氏もの"だけではない。長篇監督デビュー作の「のんき大将 脱線の巻」(49)、劇場初公開の遺作「パラード」(74)、ジャン=リュック・ゴダールが「右側に気をつけろ」(87)でオマージュを捧げた脚本・主演作「左側に気をつけろ」(36)など、バラエティーに富んだ作品群がある。フランソワ・トリュフォー、オーソン・ウェルズも夢中にさせた仏映画界の至宝。全貌に触れるまたとないチャンスだ。

 

タチとひと目でわかる個性的ないでたちはチャールズ・チャップリン、物言わぬスタイルはバスター・キートンを思わせる。米サイレント喜劇の影響を公言し、特に初期作品はスラップスティック(どたばた)喜劇の色が濃い。しかし、次第にどたばた調は弱まり、セットやサウンドに凝った風刺で高い評価を得る。

 

「ぼくの伯父さん」はその代表作。続く「プレイタイム」(67)はさらなる発展型で、タチ映画の一つの到達点といえる。パリ東部に近未来都市のセットを組み、米国人ツアー客の混乱を文明批評的視点で描いた野心作だ。

 

"ユロ氏もの"の1本だが、ユロ氏は主要登場人物の一人。セットの細部は都市文明の非人間性を象徴すると同時に、笑いの起爆装置となっている。初期ハリウッド映画を愛したタチだが、米国流の合理主義、効率主義には辛らつだった。「プレイタイム」は、そんな姿勢が最も先鋭的に表れている。撮影日数は345日。当時として仏映画史上最高の製作費15億フランが投じられた。最近再評価の機運高まる作品を、まずご覧になって頂きたい。


「ジャック・タチ映画祭」 2014年4月12日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。上映スケジュールなど詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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