2014/4/ 4

映画「アデル、ブルーは熱い色」/日本映画では考えられないストレートなセックスシーン 女優2人の圧倒的存在感

女子高生のアデルと、美学生のエマ。2人は引き寄せられるように出会い、たちまち深い関係になる。平凡な労働者階級の家庭に育ったアデル。ブルジョアのインテリ家庭出身のエマ。堅実な教師の道を志すアデル。アーティストとして生きようとするエマ。対照的な2人が求め合い、愛し合う日々、その後訪れる別れと再会が描かれる。

セックスシーンが素晴らしい。カメラアングルに配慮するでもなく、音楽でムードを演出するでもなく、ひたすら2人の愛の交わりを、リアルに映し出す。ためらわず演じる女優2人を、遠慮なく見つめるカメラ。日本映画では考えられないストレートな映像表現に、息をのむ。ハードコア・ポルノの生々しさをたたえながら、映像詩の美しさも併せ持つ。ここだけを見ても、並外れた作品であることが分かる。

激しい愛にもかかわらず、突如として崩壊する2人の関係。いや突然のように見えるが、着々と準備されていたと言うべきか。アデルはエマの期待に反し、文学的才能を生かすことなく、小学校教師となる。一方、エマはアーティストの夢をかなえる。

身も世もなく泣きじゃくり、洪水のように鼻水を流す

2人は強い愛の絆で結ばれながら、決して交わることのない別々の人生を生き続ける。その隔絶感は互いに相手を自分の家庭に招き、生活レベルの違いを実感し合った最初期から最後に到るまで、ついに解消されることはない。距離は埋められるどころか、徐々に広がり、いつのまにか限界まで達していた。だからほんの一突きで破局を招いてしまったのだ。異性同士であれば、結婚生活などを通して距離は縮められていく。同性カップルでは、それができないのだろうか。

エマを失ったアデルは、身も世もなく泣きじゃくり、洪水のように鼻水を流す。"入魂の"という形容では物足りない、アデル・エグザルコプロスの迫真の演技に圧倒される。

同性愛を扱った映画はたいてい感情移入がしにくい。しかしこの作品は、エグザルコプロスとレア・セドゥ扮する2人の女の鮮烈な存在感により、見る者を否応なく彼女たちの愛の世界へと引き込んでくれる。

第66回カンヌ国際映画祭(2013年)パルムドール(最高賞)受賞作。


「アデル、ブルーは熱い色」(2013年、フランス)
監督:アブデラティフ・ケシシュ
出演:アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ
2014年4月5日(土)、新宿バルト9、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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