1972年、米国で作られた伝説のポルノ映画「ディープ・スロート」。予算2万5000ドル、製作期間1週間の低予算ポルノだったが、評判が評判を呼び、多くの有名人も鑑賞。興行収入6億ドル以上を記録した。「ラヴレース」はその誕生秘話、公開後の社会現象、主演女優リンダ・ラヴレースの半生を再現した。
ドキュメンタリー映画「ハーヴェイ・ミルク」(84)のロバート・エプスタイン、ジェフリー・フリードマンが共同監督。主演は「レ・ミゼラブル」(12)のアマンダ・セイフライドだ。
ヌードや過激な性描写に果敢に挑む
70年、厳格なカトリック教徒の両親(ロバート・パトリック、シャロン・ストーン)と暮らすリンダ(アマンダ・セイフライド)は21歳。バー経営者のチャック・トレイナー(ピーター・サースガード)と出会い、親に反発するようにスピード結婚する。うぶな少女だったリンダは、チャックの教えで"性の秘技 ディープ・スロート"を習得した。半年後。チャックは店での買春容疑で逮捕。保釈金を得るため、リンダをポルノ映画に出演させることを思いつく。
前半から中盤は「ディープ・スロート」にまつわる伝説を映像で見せる。後半はリンダの自伝に基づき、映画製作から公開、チャックとの夫婦生活など、隠された真実を描く。リンダが歩んだ光と影の半生。二層構造で浮き彫りにする構成が秀逸だ。ポルノ女優としての活動はわずか17日。人生が一転したリンダの葛藤、両親との確執も掘り下げられ、人間ドラマとして充実している。
難点は「ディープ・スロート」を知らない観客──恐らくほとんどの日本人には、作品の魅力がダイレクトに伝わらないことだろう。撮影現場が再現されるものの、「ディープ・スロート」本体を見ていないと今一つピンとこない。同様に映画製作の内幕を描いた作品に「ヒッチコック」(12)がある。こちらは誰でも知る大御所が主人公で、名作「サイコ」の裏側を描き、観客との「記憶の共有」に成功したが、「ラヴレース」は題材がマニアック過ぎた。
しかし、主演のセイフライドは体当たり演技。清純派のイメージをかなぐり捨て、ヌードや過激な性描写に果敢に挑んでいる。女優として一皮むけた姿を確認したい。
「ラヴレース」(2013年、米国)
監督:ロバート・エプスタイン、ジェフリー・フリードマン
出演:アマンダ・セイフライド、ピーター・サースガード、シャロン・ストーン、ジェームズ・フランコ、ロバート・パトリック
2014年3月1日、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
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