昨年10月に死去したベストセラー作家トム・クランシーが生んだ人気キャラクター"ジャック・ライアン"。米中央情報局(CIA)捜査官の活躍を描くシリーズで、これまで4本の映画になっている。主演はいずれもハリウッドのトップスター。「レッド・オクトーバーを追え!」(90)はアレック・ボールドウィン、「パトリオット・ゲーム」(92)と「今そこにある危機」(94)はハリソン・フォード、「トータル・フィアーズ」(02)はベン・アフレックだった。
5作目の「エージェント:ライアン」はクリス・パイン。J・J・エイブラムス監督作「スター・トレック」(09)の主演俳優だ。今回は"捜査官ライアン"の誕生までを描く。学生から兵士、経済アナリストに転身した若き日を、オリジナルのストーリーでたどる。監督はケネス・ブラナー。敵役のチェレヴィンとして出演も兼ねている。
主演が若返り、新たなスタートラインに
米ウォール街で経済アナリストとして活躍するライアン。ある日CIAのハーパー(ケヴィン・コスナー)に、情報分析員としてリクルートされる。その後、ロシア投資会社チェレヴィン・グループの不穏な動きを察知。潜入捜査のためモスクワに派遣される。
しかし、そこに待ち受けていたのは刺客だった。ライアンはホテルの部屋で突然襲われ、格闘の末に相手を殺してしまう。突然の出来事に動揺し、CIA本部に救出を要請。現れたのはハーパーだった。危機を乗り越えたライアンに、ハーパーは銃を渡す──。
今回ライアンの敵となるのは、世界経済を牛耳るロシアの実業家。世相を反映した設定だ。チェレヴィンはニューヨークでテロを起こし、大金を奪おうとしている。阻止へのタイムリミットは18時間。心理戦で始まった対決は、ライアンの婚約者キャシー(キーラ・ナイトレイ)を巻き込んだ追跡劇に発展。テロ計画をめぐり壮絶な攻防が展開する。
頭脳明晰でデスクワーク専門のライアンが、"スパイ経験ゼロ"で現場に放り込まれる。いわば未熟な捜査官だ。初めて人を殺して動揺し、婚約者を脅かされた怒りで暴走する。一方で情報分析の能力は一級品。知力と行動力を合わせ持つ、荒削りな若きライアン像は、過去のキャラクターのイメージを覆すだろう。そんな主人公を導くコスナーは、安定した演技で作品を引き締める。
主演が若返り、新たなスタートラインに立ったシリーズ。滑り出しは上々で、今後の展開も楽しみだ。
「エージェント:ライアン」(2013年、米国)
監督:ケネス・ブラナー
出演:クリス・パイン、キーラ・ナイトレイ、ケビン・コスナー、ケネス・ブラナー
2014年2月14日(金)先行、15日全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
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