2014/2/ 1

映画「新しき世界」/丁々発止の心理戦は見応え十分 怒涛のラストが光る"潜入捜査もの"

犯罪組織に潜入した捜査官が、組織の後継者争いに巻き込まれ、人生をかけた大勝負に出る――。米国の「フェイク」(97)、香港の「インファナル・アフェア」(02)など"潜入捜査もの"の系譜に連なる韓国映画「新しき世界」。「悪魔を見た」(10)の脚本家パク・フンジョンの監督第2作である。

最初は捜査目的の偽装だったはずだが...

主人公の警察官イ・ジャソン(イ・ジョンジェ)は、韓国最大の犯罪組織「ゴールドムーン」に潜入して8年。組織ナンバー2のチョン・チョン(ファン・ジョンミン)の絶大なる信頼を得て、組織の幹部にまで上りつめた。だが正体を隠し、犯罪行為に加担し続ける日常のストレスは尋常ではなく、一日も早い警官への復帰を願っている。

組織ではチョン・チョンが束ねる華僑系と、ライバルのイ・ジュング(パク・ソンウン)が率いるグループが対立。会長の急死で2人が跡目を争うことになるが、警察はこの機に乗じて、一気に組織の壊滅を図ろうとする。

ジャソンは、上司のカン・ヒョンチョル課長(チェ・ミンシク)から、潜入捜査の続行と2人の行動に関する情報提供を求められる。警官復帰が先延ばしになり、反発を覚えるジャソンだが、服従するしかない。逆らえば組織へ密告されて万事休す。カン課長ならやりかねない。任務遂行のためには人を人とも思わない、冷酷非情なカン課長。一方、粗野で凶暴だが、人情に厚いチョン・チョン。ジャソンの心は、対照的な2人の間で揺れ動いてもいた。

チョン・チョンとの関係は、捜査目的の偽装だったはず。しかしいまや熱い血が通い、兄弟のような感情も生まれていた。組織から抜けたい気持ちと裏腹に、チョン・チョンの信頼と情を裏切りたくない思い。ジャソンの心は千々に乱れる。だが、そんな苦悩をよそに、カン課長は組織の壊滅作戦を始動させる――。

「イルマーレ」(00)、「ハウスメイド」(10)のイ・ジョンジェが、ストイックな主人公を好演。複雑な内面を押し隠すポーカーフェイスに、男の哀愁をにじませる。チョン・チョン役のファン・ジョンミン、カン課長役のチェ・ミンシクも、持ち前の演技力を遺憾なく発揮。いぶし銀の輝きを放っている。

演技派スター3人が繰り広げる丁々発止の心理戦は見応え十分。ハイライトは、ジャソンが決然たる行動に出る怒涛のラストだ。「悪魔を見た」の脚本を手がけたパク・フンジョンの衝撃的かつスピーディーな展開は、見る者を圧倒するだろう。


「新しき世界」(2013年、韓国)
監督:パク・フンジョン
出演:イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン、パク・ソンウン、ソン・ジヒョ
2014年2月1日(土)、丸の内TOEI、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

人気キーワードHOT

特集SPECIAL