第17回日本ホラー大賞長編賞を受賞した法条遥の「バイロケーション」が、角川ホラー文庫20周年記念作品として映画化された。出演は水川あさみ、監督・脚本は「リアル鬼ごっこ3・4・5」(12)の安里麻里だ。
「バイロケーション」は、自分の近くにもう一人の自分が発生する現象を指す。無意識で発生し実体のない「ドッペルゲンガー」と異なり、自らの意思で発生し実体を持つ。鏡には映らず、本人を殺して入れ変わる。映画は冒頭、19世紀のラトビアで起きたバイロケーション現象を再現。本題へ入る。
表バージョンと裏バージョンあり
画家を目指す桐村忍(水川あさみ)は、マンションの一室で黙々と絵を描いていた。そこへ下の部屋に越してきた高村(浅利陽介)があいさつに来る。その日を境に、忍に不思議な現象が起きる。スーパーで偽札使用を疑われ、防犯カメラ映像にはいるはずのいない自分が映っていた。刑事の加納(滝藤賢一)に連れていかれたレストランには、「バイロケーションの会」の飯塚(豊原功補)、大学生・御手洗(千賀健永)、主婦の門倉(酒井若菜)、謎の少年・加賀美(高田翔)が待っていた。加納も会の一員だったのだ。
5人から衝撃の事実を明かされる忍。カメラに映っていたのは、バイロケーションで生じたもう一人の自分だという。通称「バイロケ」は本人より凶暴で、必ず本人を殺しに来るという。飯塚は「あなたを助けたい」と告げるが、忍は信じず部屋を出る。目の前にもう一人の自分が立っていた──。
人間が相反する感情に引き裂かれた場合に発生するバイロケ。メンバーそれぞれの発生原因を描きつつ、凶暴化したバイロケと本人の対立をスリリングに描く。いくつもの伏線で観客を惑わせながら、最後に明かされる衝撃の真実。俳優養成所「無名塾」出身の滝藤が、師の仲代達矢譲りの眼力、怪演で他を圧倒する。
作品は異例の2バージョン構成。1月18日に公開される「表」バージョン、2月1日に公開される「裏」バージョンは結末が異なる。物語の描かれる視点を理解しながら、改めて両バージョンを見ることで、作品の真実が見えるのかもしれない。
昨年の第26回東京国際映画祭で特別招待作品としてワールドプレミア上映された。
「バイロケーション」(2013年、日本)
監督・脚本:安里麻里
出演:水川あさみ、千賀健永(Kis-My-Ft2)、高田翔(ジャニーズJr.)、滝藤賢一、浅利陽介、酒井若菜、豊原功補
2014年1月18日、角川シネマ新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
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