花の都・パリの老舗ナイトクラブ「クレイジーホース」。踊り子たちが芸術的なストリップショーを繰り広げ、60年にわたって観客を魅了してきた。2012年、そんな華やかな舞台を、有名靴デザイナーのクリスチャン・ルブタンが演出。「ファイア」と名付けられた演目は80日間限定上映され、人々の語り草となった。
映画「ファイアbyルブタン」は、「ファイア」を映画のために再構築。巨大スタジオにステージを組み、3D映像で再現している。
エロスというより、ゴージャスで幻影的なパフォーマンス
「クレイジーホース」の舞台は、単なるストリップショーではない。磨き上げられた踊り子の肉体、緻密で繊細な音楽、計算し尽くされた照明。光と音が官能的に交わり、女性たちのプロ意識が芸術性を高めていく。ファンは世界中から集まり、俳優やミュージシャンらも魅了してきた。
そんな美の世界に、ルブタンも魅せられた。10代から「クレイジーホース」に出入りし、ダンサーへの差し入れ、ラブレターの配達など、身の回りの雑用をこなしていたという。念願かなって演出した「ファイア」には、ルブタンの願いを受け、デビッド・リンチ監督が音楽を提供している。
「ファイアbyルブタン」は、ステージの合間にルブタンが熱い思いを語る構成だ。さらに幻想的なイメージ映像を背景に、ダンサー一人一人が「クレイジーホース」について話す。
英近衛兵に扮した半裸の踊り子が、縦横に移動しながら隊列を組む群舞。正面、真横、真下からのカメラアングル、クローズアップやスローモーションを駆使。客席から見える以外の角度でショーを映し出す。光の反射に適した3D映像は、照明に輝く肉体を美しくとらえる。鍛え抜かれた体の質感、筋肉の躍動感。ルブタンがデザインしたハイヒールは、ラメが散りばめられている。暗闇に浮かび上がる肉感的な足。エロスというより、ゴージャスで幻影的なパフォーマンスだ。
さらに、CG(コンピューター・グラフィックス)やプロジェクター映像との合成も。ハイヒールを履いた足だけに焦点をあてる演出など、さまざまな工夫が施されている。
「クレイジーホース」の映画化は今回が3度目。多角的な映像表現、高精度の3D技術で、一連の作品の中で"本命"といえるだろう。パリでしか見られない舞台が、スクリーンで味わえる。幻想的で独創的な、世界一流のエンターテインメントだ。
「ファイアbyルブタン」(2012年、フランス)
監督:ブルノ・ユラン
出演:クリスチャン・ルブタン、「クレイジーホース」のダンサーたち
2013年12月21日、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。