2013/12/ 9

映画「ブリングリング」/遊びで始まった若者たちの泥棒ライフ 実際の事件をリアルに再現

「泥棒したい」。一連の騒動は、なにげない一言で始まった。米ロサンゼルス郊外の高級住宅地。10代の窃盗団が次々と有名人の自宅に忍び込み、高価なブランド品を盗んでは逃げる。ソフィア・コッポラ監督の新作「ブリングリング」は、実際の事件をリアルに再現した作品だ。

窃盗団のリーダーにエマ・ワトソン

「ブリングリング」は"キラキラしたやつら"の意味で、窃盗団に付けられた通称だ。サム(エマ・ワトソン)を中心とした少年少女5人は、ナイトクラブで知り合った。店内にはエンターテインメント業界の有名人、ハリウッドスターが行き交っている。仲間の1人がインターネットでスターの自宅を調べ、パーティー三昧の様子を知り、サムがつぶやいた。「泥棒したい」

5人が狙ったのは、有名人の留守時。ネットのゴシップ情報でスターの動向を調べ、自宅にいないと分かれば侵入と窃盗を繰り返す。パリス・ヒルトン、リンジー・ローハン、ミーガン・フォックス、オーランド・ブルームとミランダ・カー夫妻......ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ルブタンなど高級ブランド品の数々。豪華な衣装や靴を身に着け、セレブ気分に5人は有頂天となる。

しかし、犯行は次第にエスカレート。おふざけで始まった"冒険"は、メディアに大々的に取り上げられ、5人に捜査の手が迫る──。

彼らの冒険は、軽くてくったくがない。悩みや葛藤ががあまり感じられない。スターを見て興奮し、ネットで簡単に個人情報を入手し、近所へ買い物に行くように窃盗を繰り返す。罪の意識の薄さ、あふれるブランド品のきらめきが、画面に絶妙な空虚感を与えている。

窃盗団のリーダー格を演じたエマ・ワトソンがうまい。同じ10代の葛藤を描いた「ウォールフラワー」とまったく異なる役柄。前者は90年代、今回は現代。二つの時代の"青春の迷走"を、存在感たっぷりに演じ分けている。


「ブリングリング」(2013年、米・仏・英・日・独)
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:エマ・ワトソン、ケイティ・チャン、クレア・シ?ュリアン、イス?ラエル・フ?ルサール、タイッサ・ファーミカ?、レスリー・マン
2013年12月14日、渋谷シネクイントほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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