スウェーデンを代表する映画監督、イングマール・ベルイマン。ノルウェー生まれの名女優、リヴ・ウルマン。二人は「仮面/ペルソナ」(66)の撮影で出会い、たちまち恋に落ちる。ベルイマン46歳、ウルマン25歳。ともに既婚者。不倫の恋だった。ウルマンは家庭を捨て、ベルイマンと暮らし始める。
しかし、蜜月は長く続かなかった。ウルマンはベルイマンの束縛と嫉妬に悩まされ、ベルイマンはウルマンのいら立ちと怒りに苦しめられた。結局、同居は5年で終わる。しかしその後、二人は親友として関係を復活させる。親密な関係は、2007年にベルイマンが亡くなるまで続いた。
固い絆を物語るラストシーンに胸が熱くなる
「リヴ&イングマール ある愛の風景」は、二人の40年以上に及ぶ愛と友情の軌跡を追ったドキュメンタリーである。ウルマンの回想を中心に、ベルイマンの手紙、二人が生んだ作品、撮影風景などが、その時々の関係やウルマンの心境を実証していく。
インタビューでのウルマンの語りと、合間に挿入される作品映像が、見事に呼応していることに驚く。スウェーデンのフォール島で同居していた時期、二人は「狼の時刻」(68)や「恥」(同)を撮っている。当時のウルマンの精神状態そのものが、作品に投影されている。
インタビューに応えるウルマンが美しい。間もなく75歳。少女のように愛らしい笑顔は、幸福な人生をうかがわせる。ベルイマンとの恋愛には苦しみもあったが、思い出に昇華されているのかもしれない。
ベルイマンは「君は僕のストラディバリウスだ」と言ったという。「心から誇りに思う」と語るウルマン。女性として愛されると同時に、女優として必要とされたことがうれしかったのだろう。
インタビューは二人がかつて暮らしたフォール島、ベルイマン宅で行われた。そこでウルマンは思いがけないものを発見する。遺品のぬいぐるみ。中に入っていたのは――。固い絆を物語るラストシーンに胸が熱くなる。
「リヴ&イングマール ある愛の風景」(2011年、ノルウェー・スウェーデン・イギリス・チェコ・インド)
監督:ディーラージ・アコルカール
出演:リヴ・ウルマン、イングマール・ベルイマン
2013年12月7日、ユーロスペースほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。