他人と交わるのが苦手な高校生1年生、チャーリー(ローガン・ラーマン)。新学期の沸き立つムードの中、卒業までの孤独な日々を思い、ひとり憂鬱な気分に沈んでいた。そんなチャーリーが、アメフト観戦中に知り合った友人たちと行動をともにすることで、"壁際"を脱して居場所を見出していく――。
経験、自信、成長... そんなシンプルな映画ではない
時代設定は1991年。ゲイ、ドラッグ、仏教などが、当たり前のように描かれている。普通じゃないからといって直ちに排斥されるわけではない。チャーリーを刺激的な世界へと連れ出す上級生のパトリック(エズラ・ミラー)とサム(エマ・ワトソン)。とりわけパトリックは筋金入りの変人だが、欲望に忠実に生きつつ、思い切り輝いている。メインストリームから外れていても、彼らは学園生活を存分に謳歌している。チャーリーは二人の生き方を見て、活路を見出す。
異端者のグループに仲間入りし、認められることで、チャーリーは人生で初めて脚光を浴びる。文学的才能を自覚し、作家志望を公言。個性的な女子生徒の接近。憧れのサムとの初キス。童顔で頼りなげだったチャーリーが経験を積み、落ち着きと自信を身につけていく。しかしある事件をきっかけに、チャーリーの輝ける時間は終焉を迎える。
内気な少年が個性的な友人に出会い、初恋やバカ騒ぎを経験し、自信をつけて成長していく。それだけなら典型的な青春映画の骨格だ。だが「ウォールフラワー」はそれほどシンプルではない。チャーリーの内向性には、幼児期のトラウマがある。何であるか語られないまま、ラストで衝撃的に提示される。曇りのない爽やかなエンディングとほど遠い、もやもやの残る終わり方。しかし、割り切れなさこそリアルな感触となっている。
青春を賛美する映画ではない。甘さも苦さも、喜びも痛みもひっくるめ、青春の本質に迫った作品だ。原作は1999年、米国で出版され大ヒットした同名小説。作者のスティーブン・チョボスキーが自らメガホンをとっている。
「ウォールフラワー」(2012年、米国)
監督:スティーブン・チョボスキー
出演:ローガン・ラーマン、エマ・ワトソン、エズラ・ミラー、メイ・ホイットマン
2013年11月22日、TOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。