2013/11/14

映画「ミッドナイト・ガイズ」/70代の3人衆が魅せる周到な演技 熟練の技に酔いしれる

アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、アラン・アーキン。名前を並べるだけで、あの作品、この作品が脳裏に浮かぶ。「ミッドナイト・ガイズ」は3人の足跡に敬意を表した、おかしくも気の利いた犯罪ドラマだ。

娼婦の店に向かう足取りも頼りない

米ロサンゼルス。28年の刑期を終え、ギャングのヴァル(パチーノ)が釈放される。迎えに出たドク(ウォーケン)は昔の仕事仲間。久々の再会を喜び合い、出所祝いに夜の町へ繰り出す。

くつろぐヴァルを横目で見ながら、ドクは内心憂鬱だった。二人のボスのクラップハンド(マーク・マーゴリス)が、ドクにヴァルの殺害を命じたからだ。ボスはヴァルが自分の息子を殺したと思い込んでいた。ヴァルが他人の罪をかぶり、28年服役したとはつゆ知らず。

期限は翌朝10時。落ち着かないドクの様子を見て、ヴァルは「俺を殺すつもりだろう」と見抜いてしまう。銃を収めるドク。二人はその足で車を盗み、老人ホームにいる仲間のハーシュ(アーキン)を連れ出し、夜の街を疾走する。しかし、約束の時は刻一刻と迫っていた──。

28年ぶりに仲間が出所し、顔をそろえた3人はみな70代。演じた3人と同年齢の設定だ。昔なじみの娼婦の店に向かう足取りも、銃を構えて走る足元も、どこか頼りない。そんな観客の胸のうちを見透かすように、3人は老いを逆手に取って余裕の表情。パチーノの無精ひげも、ウォーケンの猫背も、アーキンのとぼけも、すべて周到な演技ではないか。

ハーシュと娘ニナ(ジュリアナ・マルグリース)、ドクと行きつけのレストラン店員アレックス(アディソン・ティムリン)の交流も心温まる。ありとあらゆる役を演じてきた3人が、真夜中に見せたきらりと光る物語。熟練の技に酔える作品だ。


「ミッドナイト・ガイズ」(2012年、米国)
監督:フィッシャー・スティーブンス
出演:アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、アラン・アーキン、ジュリアナ・マルグリース、マーク・マーゴリス、ルーシー・パンチ、アディソン・ティムリン、バネッサ・フェルリト、キャサリン・ウィニック、ビル・バー
2013年11月16日、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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