1960年代、米ニュージャージー州。妻、娘二人と幸せに暮らすリチャード・ククリンスキー(マイケル・シャノン)には、家族も知らない秘密があった。良き夫、良き父として近所でも評判の彼の職業は、一流の殺し屋だったのだ──。
ククリンスキー(1936~2006)は、実在した殺し屋だ。逮捕される86年まで、20年間に奪った命は100人とも、250人ともいわれる。依頼されれば銃殺、刺殺、薬殺と手段を選ばず、「一つ一つ丁寧に」仕事をこなしたという。被害者の死亡時間をごまかすため、死体を冷凍保存して遺棄。別名"アイスマン"と呼ばれた。
殺し屋、小市民、家庭人... 演技力全開のマイケル・シャノン
64年。ククリンスキーがデボラ(ウィノナ・ライダー)と初めてデートする。シャイなククリンスキーは、自分の仕事を「ディズニーアニメのダビングをしている」と説明。うそをつきながらも不器用に愛を伝える。デボラも好意を受け入れて二人は結婚。子宝にも恵まれた。
しかし実はククリンスキーは、マフィア絡みのポルノ映画海賊版製造工場で働いていた。ある夜、納期遅れのトラブルに巻き込まれ、組織のボスのロイ(レイ・リオッタ)に銃を突き付けられる。それでも動じない姿を気に入ったロイは、「殺し屋になれば大金が稼げる」と提案。ククリンスキーは「ホームレスを銃殺する」テストに通り、ロイの下で殺し屋として働き始める。
ククリンスキーを演じたシャノンは、「BUG バグ」(06)、「テイク・シェルター」(11)などで怪演を見せる一方、「レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで」(08)では心を病んだ青年を好演。米アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。今年公開の「マン・オブ・スティール」(13)で、スーパーマンの敵役・ゾッド将軍を熱演。主役を食うほどだった。
今回はストイックな殺し屋の凄味を見せる。最初はおとなしい小市民として登場。ボスに目を付けられて頭角を現し、得体の知れぬ貫禄を持った殺し屋へ変貌する。表の顔は良き家庭人だが、ある出来事で家族にも別人格を露呈。さらに家族を傷つけられ、一人怒りを爆発させる。シャノンの演技力が全開するシーンだ。
実在の犯罪者を描いただけに、観客は恐怖に凍りつくだろう。相棒の殺人鬼"ミスター・フリージー"役のクリス・エバンス、レイ・リオッタ、スティーブン・ドーフ、ロバート・デビ、ジェームズ・フランコら、ひとくせある豪華な共演者にも注目だ。
「THE ICEMAN 氷の処刑人」(2012年、米国)
監督:アリエル・ブロメン
出演:マイケル・シャノン、ウィノナ・ライダー、ジェームズ・フランコ、レイ・リオッタ、クリス・エバンス
2013年11月9日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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