2013/11/ 3

映画「セブン・サイコパス」/悲劇と喜劇、ミステリーが交差 芸達者たちの怪演が観客を煙に巻く

米ロサンゼルス。脚本家のマーティ(コリン・ファレル)は、筆が進まず頭を抱えていた。題名の「セブン・サイコパス(7人のいかれた奴ら)」だけは決まったのだが、登場人物が思い浮かばない。

酒で現実逃避するマーティに、恋人はあきれている。親友で売れない俳優のビリー(サム・ロックウェル)だけがマーティの才能を信じていた。なんとかネタが集まらないものか......ビリーは一計を案じ、無断で「いかれた奴ら募集」の広告を出す。

脚本の巧みさも十分に楽しい

ビリーは一方で、敬虔なクエーカー教徒のハンス(クリストファー・ウォーケン)と犬の"拝借業"を営んでいた。金持ちの犬を誘拐ならぬ"拝借"し、「尋ね犬」の張り紙が張られたころに飼い主に返却。礼金をもらう"ビジネス"だ。

しかしある時、ビリーが連れてきたシーズー犬がマフィアのチャーリー(ウディ・ハレルソン)の愛犬と判明。一味に追われるはめになる。一方、「ビリーの広告を見た」と、ウサギを抱いた不気味な男ザカリア(トム・ウェイツ)が登場。マーティの周辺はいつの間にか"いかれた奴"だらけになっていた──。

マーティン・マクドナー監督の長編第2作「セブン・サイコパス」。デビュー作の「ヒットマンズ・レクイエム」(08)同様、悲劇と喜劇、ミステリーが交じり合う独特の作風だ。映画の中に「脚本作り」が入れ子構造になっており、劇中劇のごとく"いかれた奴ら"が登場する。

登場人物とエピソードが、一人また一人と出現。芸達者たちのとぼけた演技が、観客を煙に巻いていく。余裕たっぷりの怪演だ。こわもてのウォーケン、ロックウェル、ハレルソンが小犬に振り回され、ウェイツがウサギを抱えている。おかしくも恐ろしい。

ばらばらだったパズルのピースは、やがて一つ一つあるべき場所に収まる。脚本の巧みさも十分に楽しい作品だ。


「セブン・サイコパス」(2012年、英国)
監督:マーティン・マクドナー
出演:コリン・ファレル、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソン、クリストファー・ウォーケン、トム・ウェイツ
2013年11月2日、新宿武蔵野館ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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