「きみに読む物語」(04)、「メッセージ・イン・ア・ボトル」(99)などで知られる作家ニコラス・スパークスの原作を映画化した「セイフ ヘイヴン」。監督は「ギルバート・グレイプ」(93)、「ショコラ」(00)のラッセ・ハルストレムだ。
外見を変え、別人になったケイティの過去とは
何かに追われるように逃亡を始める女性(ジュリアン・ハフ)。冒頭で起承転結の"起"を断片的に描き、情報を小出しにしながら作品はスタートする。彼女は「訳あり」だと観客は理解するが、逃げる理由は分からない。
米ボストンからアトランタ行き長距離バスに乗った女性。休憩で立ち寄った港町・サウスポートが気に入り途中下車する。レストランの求人広告を見て「ケイティ」と名乗り、店で働き始める。森の中にひっそり建つ家を借り、新天地で人生を再スタートさせる。
他人を警戒するケイティだが、田舎町で孤立して生きるのは難しい。そんな彼女に二人の友達ができる。男手一つで子供を育てる雑貨店のアレックス(ジョシュ・デュアメル)と、近所に住む女性ジョー(コビー・スマルダーズ)だ。何かと親切なアレックスに、当初ケイティは拒否反応を見せるが、やがて好意を素直に受け入れ、二人恋愛関係へと発展する。つかの間の安心できる場所=セイフヘイヴンを見つけたケイティ。しかし、追っ手はすぐ近くに迫っていた──。
外見を変え、別人になったケイティの過去に何があったのか。サスペンスタッチの幕開けから一転、舞台が港町に移って以降は甘い恋愛劇に変わる。一見ありがちなラブストーリーを思わせるが、並行してケイティに対する執拗な追跡劇が描かれる。観客は戸惑うが、それは精密に仕掛けられた伏線。物語は驚きの展開を見せる。
恋愛とミステリーを融合した「セイフ ヘイヴン」。スパークスならではの巧みな語り口が、観客の心をつかんで離さない。甘い恋愛劇と並行するサスペンス、スリルあふれるクライマックスから予想外のラストへ。「親愛なる君へ」(10)に続いてスパークス作品を手がけたハルストレム監督。甘さと苦味をブレンドしたバランスの良い演出、スピリチュアルな要素も加わり、不思議な後味が残る作品となった。
「セイフ ヘイヴン」(2013年、米国)
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ジョシュ・デュアメル、ジュリアン・ハフ、コビー・スマルダーズ、デヴィッド・ライオンズ
2013年10月26日、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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