会社を売却直後、妻の陽子さんは亡くなった
俳優たちには動きが「本物」であることを求めた。
「今の時代劇は段取りで撮っている気がする。僕のイメージと俳優さんの考えをすり合わせて、俳優さんには演技をしてもらった。(せりふが少ないのは)武士はそれほど話さないのでは、と思ったから。撮影は『収穫』で編集は『調理』。調理でいかにメリハリを付けるか」
撮影はすべてロケで行った。自ら各地を歩き、雪中シーンが撮れる場所を探し回った。若手俳優には半年間、みっちり殺陣を練習させた。目指したのは「武士道」を縦糸に、「走る」「斬る」を横糸に織りなす活劇だ。
「いかにリアルにするか。若い俳優には『斬られるんではなく、斬りに行くんや』と。ベテランの俳優さんたちは知識も経験も豊富。所作もきちんとされる。生かされる機会が少ないのは惜しい」
会社を売却直後、妻の陽子さんが亡くなった。
「ぼろぼろになり、何か打ち込むものが必要だった。(生前)映画を撮りたいと話したら、妻は『やりたいならやったらええ』と言ってくれた」
時代劇にしか描けぬ物語。「蠢動 -しゅんどう-」には、監督の思いが詰まっている。
「蠢動 -しゅんどう-」(2013年、日本)
監督・脚本:三上康雄
出演:平岳大、若林豪、目黒祐樹、中原丈雄、さとう珠緒、栗塚旭、脇崎智史
2013年10月19日、東京・有楽町スバル座、大阪・TOHOシネマズなんばほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。