イスラエルとパレスチナの子供取り違え事件と家族の葛藤を描く「もうひとりの息子」の特別上映会が9月28日、東京都港区であった。世界に停戦と非暴力を呼びかける「国際平和デー」(同21日)を記念したもの。来日し出席したロレーヌ・レヴィ監督は「家族とは何か。答えを出すのではなく、問いかける作品」と語った。
「互いを尊重し合い、共存する方法がある」イスラエル大使
イスラエルのユダヤ人家族と、パレスチナ自治区のアラブ人家族が主人公の同作。1991年の湾岸戦争時、ミサイル攻撃で病院が被害を受け、赤ん坊が取り違えられた。18歳になった2人は事実を知らされ衝撃を受け、両親や兄弟にも戸惑いが広がる。民族、宗教、戦争を背景に、家族が葛藤を経て共存の道を模索する物語だ。昨年の第25回東京国際映画祭でグランプリ、監督賞を獲得した。
フランス人として難しいテーマに取り組んだレヴィ監督。「私に語る資格はあるのか、と不安があった。しかし、現地で長い時間を過ごし、イスラエル、パレスチナ双方の家族にたくさん会った。撮影スタッフも混成チーム。彼らに多くのことを考えさせられ、さまざまななことを注入してもらった。全員で撮った作品だと思う」と振り返った。
また、この日はパレスチナのワリード・アリ・シアム、イスラエルのルート・カハノフの両駐日大使も出席。シアム大使は「(パレスチナ自治区の)壁の向こうの生活は、とても厳しいと伝えたい。私たちは20年間平和について語ってきたが、今後は素早い行動が必要だ。隣国イスラエルと平和な共存ができると思う」と述べた。
作品を涙ながらに観賞したカハノフ大使は「パレスチナの大使とここに立っていることに感動している」と感無量の様子。「これまで二つの国の争いを描く映画はたくさんあったが、たいていは一方を非難する内容だった。互いを尊重し合い、共存する方法があると思う。このような楽観的な映画が、解決を模索する段階では必要」と話した。
さらに、上映後のトークショーでレヴィ監督は「親子とは何か。答えを出すのではなく、観る人に問いかけたつもり」と説明。最後に両大使と固い握手を交わし、満場の客席から拍手が送られた。
「もうひとりの息子」(2012年、フランス)
監督・脚本:ロレーヌ・レヴィ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベ、ジュール・シトリュク、マハディ・ダハビ、アリーン・ウマリ
2013年10月19日、シネスイッチ銀座ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
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