中古のビデオカメラを入手した高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)。「今から生活のすべてを記録する」と自分を撮り始める。大酒飲みの父の暴力に耐えながら、寝たきりの母の世話をする日々。高校にカメラを持ち出せば嫌がらせされ、運動場を撮影すればチアリーダーに注意される。残るのは不甲斐ない映像ばかりだ。
街中のカメラ映像が映画になっていく
ある日、いとこのマット(アレックス・ラッセル)にパーティーに誘われ、会場で踊る女性を撮っていたところ、誤解した女性の恋人に殴られてしまう。泣き出したアンドリューを、マットとアメリカンフットボール部のスター選手スティーブ(マイケル・B・ジョーダン)が森の洞窟探検に誘う。地下の穴に潜り込んだ3人は、光り輝く不思議な物体に触れ、未知の力を手に入れる。
街に戻った3人は、学校や路上でいたずらを始めて上機嫌。やがて空も飛べるようになり、力を利用した手品を披露。一躍みんなの人気者になる。ところがアンドリューは女の子との初体験に失敗し、笑われ者に逆戻り。家では父に殴られ、母の薬を買いにいく金もない。鬱屈を募らせた末、アンドリューは力の使い方を誤り──。
いじめられっ子が超能力を手に入れ、さまざまな騒動を巻き起こす。ブライアン・デ・パルマ監督作「キャリー」(76)や「フューリー」(78)、いじめられっ子が悪魔の力で復讐する「デビルスピーク」(81)を思い出す。根底にホラー映画の血が流れているようにも感じる。
表現方法は手持ちカメラの主観映像を用いた「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(99)、「パラノーマル・アクティビティ」(07)と同じだ。後半はアンドリューが力を使い、カメラを空中に浮かせて自分を撮影。さらに監視カメラ、携帯電話、パトカーの車載カメラ、ヘリコプターからの俯瞰など、街中の記録動画を駆使して物語は構成される。
主人公が家や学校で虐げられ、力を得て学校の人気者になった末、再び挫折する。内面や葛藤もきちんと掘り下げられている。しかし、クライマックスはやり過ぎ感が否めず惜しいところ。ダイナミックで斬新な映像表現でデビューしたジョシュ・トランク監督。次回作にも期待したい。
「クロニクル」(2012 年、米国)
監督:ジョシュ・トランク
出演:デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン
2013年9月27日、2週間・首都圏限定公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。