2013/9/11

映画「サイド・エフェクト」/ソダーバーグ監督長期休暇へ 熟成の"心理戦"描く

初の長編「セックスと嘘とビデオテープ」(89)で鮮烈なデビューを果たしたスティーブン・ソダーバーグ監督。同作は弱冠26歳、史上最年少でカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を監督にもたらした。「トラフィック」(00)では米アカデミー賞監督賞を獲得。その後も豪華キャストの犯罪映画「オーシャンズ」シリーズなど、大小さまざまな作品を撮り続けてきた。そして50歳を迎え、劇場長編としては「サイド・エフェクト」を最後に長期休暇入りを宣言する。

ヒッチコックの「めまい」に通じるサスペンス映画

タイトルは薬の副作用を意味する。冒頭で妻が夫を自宅で刺殺。事件までの背景と事件後の陰謀が描かれる。出演はジュード・ロウ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタムら。「ドラゴン・タトゥーの女」(11)のルーニー・マーラが、物語の鍵を握るうつ病患者のエミリーを演じる。

新婚間もないエミリー(ルーニー・マーラ)は、証券マンの夫マーティン(チャニング・テイタム)がインサイダー取引で逮捕されてしまい、孤独な4年間を耐えてきた。服役を終えた夫が戻り、新生活が始まるはずだったが、アパート地下駐車場で自損事故を起こす。診察した精神科医のバンクス(ジュード・ロウ)は、現場にブレーキの跡がなく、「駐車場で彼女が取り乱していた」という目撃証言から「わざとぶつけて自殺を図ったのでは」と推測する。

夫の不在でうつ病になったエミリーが、病を再発させたと判断したバンクス。過去に診察したシーバート博士(キャサリン・ゼダ=ジョーンズ)に相談する。博士から「エミリーは薬の副作用に苦しんでいた」と聞き、バンクスは本人の希望で新薬を処方する。たちまちエミリーの症状は改善し、夫婦仲も元通りになる。しかしその後、エミリーの自宅で夫の刺殺体が発見。争った後はなく、凶器の包丁からエミリーの指紋が検出される──。

独立系映画でデビューしたソダーバーグ監督。規模やジャンルを問わず、独自のスタンスで作品を世に送り出してきた。「サイド・エフェクト」は、男が女に惑わされるヒッチコックの傑作「めまい」(58)に通じるサスペンス映画だ。薬に依存する現代社会を背景に、医師と患者の絶対的信頼関係を逆手にとる。

新薬の処方で製薬会社から莫大な謝礼が入るバンクス。新薬の副作用で殺人事件を起こすエミリー。二人の思惑が交差し、事件は意外な方向に動き出す。音楽は「エリン・ブロコビッチ」(00)などソダーバーグ作品と相性のいいトーマス・ニューマン。淡々と反復するミニマルなシンセ音楽をバックに、無駄のないシャープな語り口で観客を引き付けて離さない。複雑に絡み合う男女の心理戦は見ごたえ十分。ソダーバーグの成熟を感じる一本である。


「サイド・エフェクト」(2013年、米国)
監督:スティーヴン・ソダーバーグ
出演:ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタム、ヴィネッサ・ショウ
2013年9月6日、TOHOシネマズみゆき座ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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