観た者に死が訪れる「呪いのビデオ」。鈴木光司の小説「リング」は1998年に映画化され、恐怖のキャラクター"貞子"が、ジャパニーズ・ホラー・ブームを巻き起こした。「らせん」(98)、「リング2」(99)、「リング0バースディ」(00)と続編3本が作られ、韓国と米国でリメイクもされた。
その後、貞子の呪いの道具は時代に合わせ、ビデオからインターネット動画に進化。2012年、「貞子3D」としてスクリーンに復活した。続編「貞子3D2」の監督は前作に続いて英勉。テレビドラマで活躍する瀧本美織の初主演映画となる。
新たな恐怖のキャラクター・凪の誕生
前作「貞子3D」は、呪う手段がビデオから動画に変わっただけで、「リング」のリメイクのようだった。「リング」シリーズは、呪いのビデオから逃れようともがく人々の心理を通し、じわじわ恐怖を作り出し、逃げられなかった者の前に貞子が出現する。ショッキングな演出が秀逸だった。
しかし、「貞子3D」の呪いの動画は「見た直後に死んでしまう」ため、ショックへのタメが効かなくなった。貞子も単なるホラーキャラクターに変化。クライマックスには四つんばいで襲いかかる昆虫型の貞子軍団まで登場。「リング」シリーズと別物のアトラクション映画になってしまった。
一方、「貞子3D2」には仕切り直しの印象を受ける。恐怖の源は貞子に変わりないが、中心になるのは安藤孝則(瀬戸康史)と茜(石原さとみ)の一人娘・凪(平澤広々路)だ。謎の大量死を引き起こした呪いの動画事件から5年。凪の周りで死亡事件が起こり、疑心暗鬼になる孝則の妹・楓子(瀧本美織)の視点でエピソードが語られ、呪いの真相が明らかになる。
派手な直接的恐怖を押し出した前作から一転。直接的な恐怖を継続させつつ、雰囲気や間接的恐怖を使い、呪いの恐ろしさを強化した。楓子のトラウマとなる幼少期の出来事や、凪が無心で描き続ける黒塗りの絵。"貞子ウイルス"感染者の腕に出るらせん模様のあざ。間接演出がじわじわ効いてくる。
しかし、ジャパニーズ・ホラーの元祖だった「リング」を継承したはずが、いつの間にか清水崇監督「呪怨」(03)の影響が強くなっている。長く伸びた黒髪が人を襲うシーンや、殺人鬼・柏田清司(山本裕典)が暗がりから登場する様子に「呪怨」を感じさせる。シリーズ化で物語が複雑になり、本筋から外れた感は否めないが、新たな恐怖のキャラクター・凪の誕生を描き、次へのステップへの架け橋的作品にも思えた。
「貞子3D2」(2013年、日本)
監督:英勉
出演:瀧本美織、瀬戸康史、平澤宏々路、石原さとみ、大沢逸美
2013年8月30日、角川シネマ新宿ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。