2013/9/ 4

映画「R-18文学賞ver.2 ジェリー・フィッシュ」/エスカレートしていく性描写 互いに"落ちる"まで絞め合う

親しい友人もなく、クラスで孤立している女子高生の夕紀(大谷澪)。ある日、水族館でクラスメートの叶子(花井瑠美)に声をかけられ、いきなりキスをされる。内気な夕紀と違って、叶子は派手で社交的。2人は磁石のSとNのように惹かれ合い、やがて恋愛関係へと発展していくのだが――。

「自縄自縛の私」(13)に続く「女による女のためのR-18文学賞」作品の映画化第2弾「ジェリー・フィッシュ」。メガホンをとったのは「百年の時計」(同)、「生贄のジレンマ」(同)など、精力的に作品を発表し続ける金子修介。デビューの年に「OL百合族19歳」(84)を撮った金子が、再びレズビアンというテーマに挑んだ注目作だ。

夕紀の中に眠る同性愛を呼び覚まし、後戻りのできない関係へ

キス、抱擁から始まり、首絞めプレー、セックスとエスカレートしていく性描写は、過激といえば過激だが、決していやらしさは感じさせない。生々しさもない。ロマンポルノとして撮られた「OL百合族19歳」が男性観客をターゲットとした官能作品なのに対し、今回は"女による女のための文学"がベースにあり、女性的な視点に徹して演出しているせいだろう。

描かれるのは、叶子と夕紀の恋愛とその終焉である。性に積極的な叶子は、男性経験も豊富だが、同性愛の相手は夕紀が初めて。一方の夕紀も同性愛は未経験である。ただし、性的好奇心は旺盛で、内気なくせに、バイト先のビデオ店長(川田広樹)を誘惑する程度の不良性は持ち合わせている。

物語はボーイッシュな叶子がフェミニンな夕紀をリードし、禁断の世界へと導いていく形で展開し始める。同性愛を自覚する叶子が、夕紀の中に眠る同性愛を呼び覚まし、後戻りのできない関係へ。だが、叶子はクラスメートの男子とも関係を持ち、夕紀を苦しめる。叶子の本意は何なのか。夕紀の中に沸き起こる嫉妬と不信。やがて意外な事実が発覚する――。

「気持ちいいことが好きなの」と言う叶子が夕紀に"首絞め"を提案。互いに"落ちる"まで絞め合うシーンが、なかなかエロティック。余韻たっぷりのエンディングも秀逸だ。

2人のヒロインを演じた花井瑠美と大谷澪が、それぞれはまり役。今後どんな活躍を見せてくれるか、楽しみである。


「R-18文学賞ver.2 ジェリー・フィッシュ」(2013年、日本)
監督:金子修介
出演:大谷澪、花井瑠美、奥菜恵、秋本奈緒美、竹中直人、川田広樹(ガレッジセール)
2013年8月31日、シネマート六本木ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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