過去を変えると何が起きるのか? 「残酷な目」の意味とは
思いがけずタイムトラベルに成功した主人公が、現在と過去を行き来しながら、親友の運命を変えようと奮闘する姿を描くSFファンタジー「江ノ島プリズム」。湘南のノスタルジックな風景の中に、青春の痛みと切なさがみずみずしく表現され、見る者を深い感動で包み込む。
序盤はコメディーの風味が強い。タイムスリップした修太が、ビクリと何かに驚いた瞬間、現在に引き戻される法則が、大いに笑わせる。母親に起こされ、朔の家を訪れ、タイムウォッチを着け、"江ノ電"に乗り、トンネルの中でタイムスリップ。このプロセスが何度も反復される。中盤まではそんなコミカルな展開が続く。だがある日、修太の前に今日子(未来穂香)という少女が現われてから、物語はにわかに悲劇的なトーンを帯び始める。
今日子は何十年も前から16歳のまま、修太らの通う高校にとらわれの身となった"タイムプリズナー"だった。今日子は修太に「過去を変えたら残酷な目に遭うわ」とアドバイスする。残酷な目とは何か。過去を変えると何が起きるのか。修太は今日子の言葉をどう受け止めるのか。
クライマックスでは目頭が熱くなり、ラストでは涙があふれること必至である。タイムトラベルという架空のロジックの中で、友情や恋愛を越えた人生の意味を鮮やかに浮かび上がらせた。大林宣彦監督の「時をかける少女」(83)にも肩を並べる傑作だ。
「江ノ島プリズム」(2013年、日本)
監督:吉田康弘
出演:福士蒼汰、野村周平、本田翼、未来穂香
2013年8月10日、シネマート新宿、109シネマズMM横浜、109シネマズ湘南ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。