ブラピは血の通った演技が観客をひきつける
最大の見どころは、CG(コンピューター・グラフィックス)で作られたゾンビの集団造形だ。ウイルスに感染して狂い、群れ、すさまじい速さで人間に襲いかかる。圧巻はエルサレム(イスラエル)の空撮映像。高い塀の内側に閉じ込められた無数のゾンビが、アリのように塀に食らい付き、黒山となって外にあふれ出す。
一方、ジェリーがたどり着いたウイルス研究所では、実験室=閉鎖空間での息詰まる攻防が描かれる。無数のゾンビがうろつく研究棟。保管されたワクチンを入手するため、ジェリーは身を挺してゾンビとの戦いに挑む。
進化を続ける特殊効果技術。これまで宇宙人や巨大ロボットなど、現実にない物を描くことが多かった。しかし最近は、人間や動物など実在するもので、実写で再現できない映像を見せるケースが増えている。たとえば「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(12、アン・リー監督)。躍動感あふれるトラ、大海原を跳ねるトビウオなどがCGで表現された。今回の"生き生きとした"ゾンビの群れも同様だろう。
それではいずれ、生身の人間すらCGで描く時代がくるのか。ピットの血の通った迫真の演技は、その予感に対する「ノー」にも感じられる。
「ワールド・ウォーZ」(2012年、米国)
監督:マーク・フォースター
出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノ、ダニエラ・ケルテス、ファナ・モコエナ、アビゲイル・ハーグローブ
2013年8月10日、2D・3D同時全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。