2013/7/26

映画「ペーパーボーイ 真夏の引力」/エロく、下品で、大胆な女をキッドマンが好演 真夏のミステリー

一人の純情な若者が経験する、狂おしくもまがまがしいひと夏の出来事を描いた「ペーパーボーイ 真夏の引力」。舞台は1969年の米フロリダ。ジャック・ジャンセン(ザック・エフロン)は大学の水泳部をクビになり、父親の経営する新聞社で配達をしている。いわゆる新聞少年=ペーパーボーイだ。ある日、大手新聞社の記者をしている兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が殺人事件の取材で帰郷。ジャックは兄の仕事を手伝うことになる。

マコノヒー、キューザックら曲者俳優もキッドマンの引き立て役

4年前に人種差別主義者の保安官が惨殺された事件。容疑者は貧しい白人男性ヒラリー(ジョン・キューザック)だ。すでに死刑が確定しているが、冤罪の可能性がある。

ウォードに真相究明を依頼したのは、セクシーな美女のシャーロット(ニコール・キッドマン)である。獄中のヒラリーと文通を重ねるうちに、恋心が芽生え婚約してしまったエキセントリックな女。ウブなジャックは、そんなシャーロットに一目ぼれしてしまう。

色気ムンムンで奔放なシャーロット。ヒラリーとの初めての面会では、周囲の目をはばかることなく欲望をむき出しにして、同行したジャックやウォードをあ然とさせる。ビーチでクラゲに刺され、苦しむジャックの顔や体に"放尿治療"する際も、まったく躊躇しない。エロく、下品で、大胆な女をキッドマンが好演。マコノヒー、キューザックら曲者俳優も、今回ばかりはキッドマンの引き立て役だ。

ウォードが真相を解明するプロセスと、ジャックがシャーロットに深入りするプロセスとを並行させ、物語は展開していく。熱気と湿気が混じり合った空気まで取り込んだ映像が、米国南部の夏らしい雰囲気を醸し出すとともに、まがまがしい結末の予感をはらんでいるようにもみえて素晴らしい。

冒頭登場する黒人女性は、ジャックと仲のよかった黒人メイドのアニタ(メイシー・グレイ)。アニタは主要な登場人物の一人であると同時に語り手でもある。話も人物も暑苦しい中、ウィットとユーモアに富んだアニタとジャックの会話は、一服の清涼剤のようだ。リベラルな言動で知られたスマザーズ・ブラザーズのテレビショーが打ち切りになり、がっかりするアニタの様子など、さりげなく時代背景を紹介しつつ、人物も的確に描写している。「プレシャス」(09)で脚光を浴びたリー・ダニエルズ監督が、今度も見事な手並みを見せた。


「ペーパーボーイ 真夏の引力」(2012年、米国)
監督:リー・ダニエルズ
出演:ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、 ジョン・キューザック、メイシー・グレイ
2013年7月27日、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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