中年男4人組"狼軍団"が"二日酔い=ハングオーバー"より、事件を巻き起こす人気コメディー。シリーズ3作目で最終章が「ハングオーバー!!! 最後の反省会」だ。
1作目「ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」(09)は、「二日酔いで記憶を失う」部分をバッサリ割愛。事件を起こした狼軍団が、失われた記憶を拾い集めるがごとく、さまざまな困難を克服する展開。卓越したアイデアが冴え渡った。しかし、膨大な予算を注ぎ込んだ2作目「ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える」(11)は、舞台を米ラスベガスからバンコクに移しただけ。まるでセルフリメイクのようだった。
二日酔い部分ばっさりカット トッド・フィリップス監督、心境の変化か?
今回は前作の反省からか、物語を前に進ませて基本となる二日酔いを排除。違法薬物、動物虐待、下ネタなど限界すれすれのぶっ飛んだブラック・ギャグが売りの「ハングオーバー」シリーズだが、なぜか作風が変化。一番の売りである"二日酔い=違法薬物による記憶喪失"が物語から消え、主人公たちが過去を清算する様子が描かれる。動物愛護団体が激怒しそうなスプラッター描写で幕を開けるものの、全体は優等生的な仕上がりで精彩に欠ける。
ストーリーにも変化がみえる。これまでは自己中心的で破天荒なアラン(ザック・ガリフィアナキス)が起こす事件に、義兄のダグ(ジャスティン・バーサ)、火消し役のステュ(エド・ヘルムズ)と、フィル(ブラッドリー・クーパー)が振り回されるパターンだったが、今回はアランに振り回され続けた父が心労で他界。残る3人がアランの家族と話し合い、彼のリハビリ施設入所を決定。車で入院先へ移動中、ギャングに襲われる──。
シリーズの製作、監督、脚本を担当してきたトッド・フィリップス。作品を重ねて心が変化してしまったのか。前2作とガリフィアナキス主演「デュー・デート 出産まで5日!史上最悪のアメリカ横断」(10)で、毒を吐き切ってしまったのか。嫌悪感を覚える下世話なギャグは影を潜め、万人向けのコメディーに進化した。
台風の目だったアランは人間的に成長し、生涯の伴侶を見つける一方、今回大々的にフィーチャーされたチャウが大暴走する。監督の興味はアラン役のガリフィアナキスからチャウ役のケン・チョンへと変化したのかもしれない。
「ハングオーバー!!! 最後の反省会」(2013年、米国)
監督:トッド・フィリップス
出演:ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ジャスティン・バーサ、ケン・チョン
2013年6月28日、字幕版・吹替版同時公開。作品の詳細は公式サイトまで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。