2013/4/27

映画「藁の楯 わらのたて」/「人間のクズ」を殺せば10億円 ツボを得た演出が冴える

「清丸を殺した者に10億円」。全国紙の見開き広告にきな臭い字が躍った。清丸国秀(藤原竜也)に孫娘を殺された財界の大物・蜷川(山崎努)が、国民に復讐の号令を出したのだ。人々の好奇心、欲望、殺意は一人の男に集中する。危険を感じた清丸は自首し、東京への移送が決まる。

護送チームは警視庁SPの銘苅(大沢たかお)と白岩(松嶋菜々子)、同捜査一課の奥村(岸谷五朗)と神箸(永山絢斗)、福岡県警の関谷(伊武雅刀)の5人。懸賞金が賭けられたことで、清丸は全国民を敵に回す事態になった。留置所では警察官が、病院では看護婦が、金に目がくらんで襲いかかる。しかも蜷川の細工により、極秘のはずの移送情報がインターネット上に筒抜けになっていた。

人の神経を逆なでする藤原竜也の演技が物を言う

凶悪犯を移送するシンプルなストーリー。莫大な懸賞金で人間の欲望がむき出しになり、移送の道中は予期せぬトラブル、裏切りが続く。金に狂った人々の攻撃にチームは振り回され、互いの腹の探り合いまで起きる。

高速道路ではパトカー、護送車数十台で大がかりに移送。新幹線を使うシーンでは、外観が同じ台湾の高速鉄道を使い、大規模なロケ撮影を敢行。これまでの邦画のスケールを超越したリアリティーを生み出している。一方、設定は懸賞金がかかった犯人を護送するハリウッド映画「S.W.A.T.」に似ており、ラストも「ブラックレイン」、「ダイ・ハード」を思わせるなど、米国映画の影響を感じてしまう。

かなり突飛な話だが、細部まできっちり描いているため、被害者遺族の憎悪が伝わってくる。倫理観と義務感の間で揺れる警官の複雑な内面もあぶり出す。何といっても人の神経を逆なでする藤原竜也の演技が物を言った。現実と虚構の狭間を突き進み、緊張感を保った三池崇史監督。ツボを得た演出が冴えるサスペンス・アクションだ。


「藁の楯 わらのたて」(2013年、日本)
監督:三池崇史
出演:大沢たかお、松嶋奈々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗
2013年4月26日、新宿ピカデリーほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。

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