東京のミニシアターの草分け的存在「岩波ホール」(千代田区神田)が、2014年2月に創立45周年を迎えることを記念し、2013年2月16日から「八月の鯨」(1987)をニュープリント版で上映する。
同作は、ハリウッド黄金期に活躍した名女優、リリアン・ギッシュとベティ・デイビスの共演で、老姉妹の人生を静かに切り取った名作で、同ホールでは88年に公開された。当時、31週間のロングランを記録し、「宋家の三姉妹」(1998年公開)、「山の郵便配達」(2001年公開)に次ぐ、同ホール歴代3位の動員記録を持っている。
主演、監督から直々にお礼のお手紙
同ホール支配人の岩波氏は、上映に先立ち、「この作品は、さまざまな点で私どもにとって象徴的な、大切な映画です。当時、ロードショーの他に、2回のアンコール上映も合わせて31週という、今では考えられないような長期間の上映でした」と、当時を振り返った。岩波ホールに馴染みがなくても、「八月の鯨」は見た、題名だけは知っているという人が増えたという。
実は、この作品は本国アメリカ、またイギリスでもそれほど評判にならなかった。そのため、日本での大きな反響に、主演のリリアン・ギッシュ、監督のリンゼイ・アンダーソン、そしてプロデューサーのマイク・カプランそれぞれから、礼状が届いたそうだ。
「これ以降も、私どもでは『老い」を扱った作品を取り上げる機会がありましたが、このテーマは岩波ホールにとっては重要なものとなっています。今回の上映は、公開当時の字幕、スクリーンサイズを用い、ニュープリントのフィルムで上映いたします。現在、デジタル化が急激に進んでいる映画界の中で、お客様には、フィルムの良さをじっくりと味わって頂きたいです」
「八月の鯨」(1987年、米国)
【ストーリー】メイン州の小さな島にある別荘で、毎年夏を過ごす老姉妹リビー(ベティ・デイヴィス)とセーラ(リリアン・ギッシュ)。かつて島の入り江は8月になると鯨が現われ、少女だったころの2人は鯨を見に行くのが楽しみだった。姉妹は長い間互いに支え合って生きてきたが、病気で目が不自由になった姉のリビーは周囲にとげとげしく接するため、彼女の世話をするセーラは心を痛め...。
監督:リンゼイ・アンダーソン
出演:ベティ・デイビス、リリアン・ギッシュ、ヴィンセント・プライス、アン・サザーン、ハリ―・ケリー・ジュニア
2013年2月16日、岩波ホールほかで全国順次公開。作品の詳細は同ホールサイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。