「自分探しの旅」に出た学生たちもいまはいいお父さん、お母さん
当時、私達の世代は世間にこう評されていた。「超就職氷河期の若者たち、自分探しの旅に出る」。確かに旅に出ていた仲間は多い。そもそも世の中を斜めに見るすれっからしな学生が多い美術大学だけに、まともに就職しようとする学生が少なく、そこに超就職氷河期だ。就職もせずに海外で流浪の民になるものが多かった。学生時代から世界各地を一人旅している先輩が帰国して、母校の学園祭にはなぜかやってくる。だから一層、風紀は乱れた。けれど世界を旅した先輩たちはとても輝いて見えた。
その頃に世界中のバックパッカーの間で話題になっていたのがハリーポッターである。まだipadもない時代で、分厚い本を何冊もバックパックに収めて、彼らは世界を旅していたのを思い出す。
そんな自分探しをした世代はどうなったのか。結局は日本でいいお父さん、お母さんになっているのが9割。中には肩書を冒険家として活躍している先輩も少なからずいる。今でも僻地を旅することで金を稼げているのは、彼らの表現力が人より優れていたからだろう。体験したことを記した文章、現地を撮影した写真、描いた絵画の数々。人々に注目され時代の寵児にもなった者だけが、趣味ではなく生業として世界中を旅することが許されている。
先日も世界中を旅している先輩が帰国しているということで、久しぶりに会った。相変わらず目を輝かせて語る先輩に熱き炎が見えた気がした。そう、時の流れを感じさせない。そういえば学生時代には季節の代わり目でアレルギーなんて起こしてなかった。大きなくしゃみを一つ。慣れ親しんだ環境を変えればアレルギーも治ると言うけれど、いったい私は今からどこに向かえばいいのだろう。やだ、まだ自分探しってことかしら。
モジョっこ
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。