辛酸なめ子の東京アラカルト#9 しめやかさとおしゃれさが同居する築地本願寺のカフェ

辛酸なめ子の東京アラカルト

最近のお寺や神社は時々カフェがあったりして、カフェ好きとしてはテンションが上がります。最近、築地本願寺におしゃれなカフェがオープンしたと聞いて行ってまいりました。

敷地に入ると、荘厳な本堂(重要文化財)に圧倒されます。まずはお参りしてご本尊にご挨拶。昼下がりの本堂は、そのまま涅槃に導かれそうなまったりした空気が漂っています。数十人くらい、椅子に座って聖域に浸っている方がいました。居眠りしているおじいさんもいます。僧侶が、祈願を受ける参拝者に説法をしている声がところどころ聞こえてきました。「仏様は人間の煩悩を見抜かれて、それでも導いてくださいます」おっしゃるとおりです。私は食欲という煩悩に導かれ、敷地内の真新しいインフォメーションセンターの建物へ。中に入ると案内のカウンターがあり、黒いスーツの美女に「新しくできたお墓です」とパンフを渡されました。永代供養してくれる合同墓。管理費不要だし代金的にもお手頃かもしれない......と、お寺の思うつぼというか、早くも心が動きました。

浄土真宗願寺派の築地本願寺。アクセスもかなり良いです。

まずは落ち着いて2階の書店へ。ここでは店員さんに一言言うと、本願寺の出版物の電子書籍がこの敷地内で読めるサイトのURLを教えてくださいます。「合掌ができる社会へ」「生きかた 死にかた」「仏教名言ノート」「顕如上人ものがたり」「浄土文類聚鈔」など......波動が高いです。名言ノートを開いたら、「忍をもって鎧となす」「吉凶は人によりて日によらず」といったいましめの言葉が並んでいました。

抹茶スイーツから定食、パスタまで、食欲という煩悩が......

でもこちらの施設は禁欲的なだけではありません。ちゃんと凡夫の煩悩を満たしてくれる素敵なショップやカフェがあるのです。ショップのおしゃれな念珠袋やマステ、色とりどりのお香に心惹かれました。人と被らない仏教雑貨、おすすめです。

そして「築地本願寺カフェ tsumugi」はメニューが豊富で湯葉やとろろ、日本茶などお寺感がある食材もありながら、鴨ロースやチキン、さば味噌煮、天ぷら、ベーコンなど、えっお寺でいいの?というような食材も。親鸞聖人は肉食も妻帯もされていたお方でしたので、ありがたくいただきます。

スイーツの見本。充実しすぎています。お寺なのにカフェ欲満たされまくりです。

京抹茶の生パスタ ホタテと舞茸の白味噌スープ 1200円をオーダー。白味噌の辛味がきいていておいしかったです。

パスタや御膳には1000円くらいプラスすればロールケーキとドリンクを付けられます。そこまで煩悩全開にするのははばかられたので、「親鸞聖人ごのみの小豆&ほうじ茶ハーブティー」だけ付けました。お茶は、香ばしさと甘みが霊妙なテイスト。パスタも上品な中に辛味の刺激がありました。全体的に味のセンスがいいです。ただ、タバスコの瓶がパスタについてきて、仏教では五辛と呼ばれる刺激の強い味は慎むべき、と聞いたことがあり、こちらもかけるのは自粛。もしかしたら人間性を試すテストだったのかもしれません。

都心の一等地の穴場カフェで合同墓の建物を眺めながらリラックスできました。お墓に見守られ、ひとりカフェでも全く淋しくなかったです。合掌

窓から合同墓の建物が見えます。ここに眠っている人も、たまに気晴らしにふらっと来られそうです。

 
辛酸なめ子

1974年、千代田区生まれ、埼玉育ち。漫画家・コラムニスト。著書に、『消費セラピー』(集英社文庫)、『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『女子の国はいつも内戦』(河出書房新社)、『なめ単』(朝日新聞出版)、『妙齢美容修業』(講談社文庫)、『諸行無常のワイドショー』(ぶんか社)、『絶対霊度』(学研)などがある。

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