映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」/小西未来監督に聞く
「日本酒に興味を持って調べていたが、切り口がつかめなかった。そんな時、たまたまロサンゼルスで(岩手の酒造メーカー『南部美人』の蔵元)久慈浩介さんの試飲会に参加した。つたない英語、ジェスチャーと勢いでファンを作る姿に感動し、一緒に日本酒を勉強したいと思った」
小西未来監督のドキュメンタリー映画「カンパイ!世界が恋する日本酒」。英国人の杜氏(とうじ)、米国人のジャーナリスト、日本人の蔵元らの視点から、日本酒の魅力と現在を多角的に切り取る作品だ。
とても濃くて深いマニアックなお酒
まず外国人初の杜氏、フィリップ・ハーパー氏。1988年に英語教師として来日し、その後奈良県の酒造メーカーで修行。01年に杜氏試験に合格。今は京都で杜氏として働く。続いて米国人ジャーナリストのジョン・ゴントナー氏。ハーパーと同時期に同じプログラムで来日。日本酒の魅力を英語で世界に発信する。さらに南部美人の久慈氏。日本酒の魅力を知らせるべく世界を飛び回る。
小西監督自身も米ロサンゼルス在住。映画ジャーナリストとして活動する傍ら今回の作品を撮り上げた。ところが、米国で接してきた日本酒のイメージは、決して良いものではなかったという。
「レストランへ行くとたいてい、やけどするぐらいの熱燗(かん)で出てくる。アルコールがたくさん添加された甘ったるいお酒。それが日本酒だと思われていて、ファンがなかなかできない状態だった」
しかし、取材を通じてハーパーの作る日本酒「玉川」に出合い、虜(とりこ)になった。
「とても濃くて深み、こくがある。マニアックなお酒。作るハーパーさんの人柄も自分にどんぴしゃりだった。久慈さんが作る『南部美人』とは両極端で、同じコメと水でこれだけ違うものができる。幅がすごい。二人に偶然出会って幸運だった」
作り手と接するほどに日本酒に魅せられていった小西監督。久慈氏は24か国に製品を売り込み、ゴントナー氏は日本酒の輸出、日本酒について英語で教えるセミナーを開催するなど、世界への発信に力を入れている。ではさらに日本酒の魅力を海外へ広めるには、何が必要だろうか。
「海外で日本酒を飲むのは、主に現地に住む日本人。日本酒は用語や知識の面で敷居が高い。外国人に『本醸造』、『大吟醸』と言ってもなかなか違いが伝わらない。一番いいのは、日本酒を扱うレストランや店の人が詳しくなること。彼らから直接説明を受け、おいしいと言われれば興味も深まる。僕自身にとっても、一生追いかけられるテーマができた」
監督:小西未来
出演:ジョン・ゴントナー、フィリップ・ハーパー、久慈浩介
2016年7月9日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトまで。
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。