父の失踪と急死をきっかけに、疎遠だった母と娘たちが久々に再会。それぞれのパートナーや叔母夫婦も加わり、食卓を囲む。父を追悼する厳かな宴となるはずだったが、母の無遠慮な発言でムードは一変。家族の思い出あふれる実家は、ののり合いと取っ組み合いの修羅場と化す――。
ラストに二人が見せる涙が意味するものは?
ピュリッツァー賞とトニー賞をダブル受賞した舞台劇の映画化である。主要キャスト二人を演じるのは、メリル・ストリープとジュリア・ロバーツ。火花散る演技合戦で、ともに2014年アカデミー賞の候補となった。
母バイオレット(メリル・ストリープ)、長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)、その夫ビル(ユアン・マクレガー)、娘ジーン、次女アイビー、三女カレン、その婚約者スティーブ、バイオレットの妹マティ・フェイ、その息子リトル・チャールズ......。それぞれ秘密や事情を抱えている。バイオレットの暴言を引き金に隠しごとは次々と露呈し、化けの皮がはがされていく。
バイオレットとバーバラの"キャットファイト"が見ものだ。忍耐の限度に達したバーバラが、バイオレットに飛びかかり、プロレスさながらの乱闘を繰り広げる。文字どおり体を張った二人の熱演で、ドラマはヒートアップ。緩やかに進んでいたストーリーが、ここから一気に加速する。
序盤は分かりにくかった人間関係も、輪郭が鮮明となり、群像劇としての面白さが増していく。小さなエピソードを通して、一つまた一つと暴かれていく秘密。むき出しになっていく本性。多数の人物を過不足なく書き分けた脚本が素晴らしい。
さて、終盤まで明かされない謎がある。それは、父ベバリー(サム・シェパード)の失踪と死の理由である。鍵を握るのは、ほかならぬバイオレットだ。ベバリーの失踪当日、彼女のとった驚くべき行動とは? マティ・フェイの意外な過去とは?
すべてが明かされても、なお割り切れなさが残る。この作品がいかにリアルに人生を描き出しているかの証左である。バイオレットとバーバラとの関係も、憎しみだけではない。愛だけでもない。ラストに二人が見せる涙が意味するものは?
「8月の家族たち」(2013年、米国)
監督:ジョン・ウェルズ
出演メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、クリス・クーパー、ベネディクト・カンバーバッチ、ジュリエット・ルイス、アビゲイル・ブレスリン、マーゴ・マーティンデイル
2014年4月18日(金)、TOHOシネマズシャンテほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。