米国の緊急通報番号「911」は、日本の「110」「119」番にあたる。「ザ・コール 緊急通報指令室」は、市民の電話を受けるオペレーターと、凶悪犯の緊迫したやり取りを描くスリラーだ。
米ロサンゼルス。指令室には24時間体制でオペレーターが待機している。ある夜、ベテランのジョーダン(ハル・ベリー)が少女の通報を受ける。「家に誰かが入ってくる」。ジョーダンはおびえる少女を落ち着かせ、見えない場所に隠れるよう指示。しかし、結局少女は男に見つかり、後日遺体で発見された。自責の念にかられたジョーダンは、ショックでふさぎこむ。
半年後。指令室に少女ケイシー(アビゲイル・ブレスリン)から電話が入る。「男に誘拐された。車のトランクに閉じ込められている」と訴えるケイシー。ジョーダンは再び受話器をとり、自分のトラウマと戦いつつ、救出に乗り出す──。
新旧の米アカデミー賞女優、ベリーとブレスリンの熱演にも注目
物語はシンプルだ。かつて少女を死なせてしまったオペレーターが、再び誘拐犯と対決する。犯人はケイシーを乗せたまま道路を走る。トランクの中から電話をかけてくるケイシー。情報は少ない。居場所を特定し、助け出すのは至難の業だ。ジョーダンは泣き出すケイシーをなだめ、救う方法を探っていく。
主人公がミスで誰かを死なせ、トラウマを抱え込む。雪山でテロリストと戦う「クリフハンガー」(93)を思い出す。今回の舞台は密室。ジョーダンのいる指令室と、ケイシーが閉じ込められたトランクは、電話1本だけでつながっている。少ない情報が緊迫感を高めていく。
女性が誘拐される映画といえば、テレンス・スタンプ主演の「コレクター」(65)、ジョディ・フォスター主演の「羊たちの沈黙」(91)などが有名だろう。今回は犯人が少女を誘拐し、監禁場所へ移動する過程に重点が置かれる。移動するうちにスリルが高まる仕組みだ。
一方、犯行の動機はとってつけた印象が否めない。クライマックスは「羊たちの沈黙」にも似て、米国流に力でねじふせる決着の付け方。しかし、着眼点とアイデア、絵での見せ方がうまく飽きさせない。新旧の米アカデミー賞女優、ベリーとブレスリンの熱演にも注目だ。
「ザ・コール 緊急通報指令室」(2013年、米国)
監督:ブラッド・アンダーソン
出演:ハル・ベリー、アビゲイル・ブレスリン、モリス・チェスナット、マイケル・エクランド、マイケル・インペリオリ
2013年11月30日、ヒューマントラストシネマ渋谷、丸の内ピカデリー(レイトショー)ほかで全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。