「決して薄れることのない自信を感じさせるような、めったに見られない微笑」と、一瞬見せる「まるで人を殺したことがあるような」表情(F・スコット・フィッツジェラルド著『グレート・ギャツビー』より)。謎の男、ギャツビー。
ディカプリオ「(ギャツビーは)心がとてつもなく空っぽ。人生の穴を埋める何かを探している」
1922年、米ニューヨーク。第一次大戦後の好景気に沸き、札束が飛び交う街に、若き大富豪が現れる。その名はジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)。住まいは宮殿のような大邸宅。夜ごと開かれる派手なパーティーには、大勢の著名人が集っていた。
その様子を遠くに眺める隣人、ニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)。証券会社勤めの堅い彼に、ある日ギャツビーから招待状が届く。一歩足を踏み入れたギャツビー邸は、まるで夢の世界だった。広大な庭園、巨大なプール、生演奏のジャズ、華やかに踊るダンサーたち。しかし、宴の主は姿を現さない。人々はうわさする。目もくらむ富をどう手に入れたのか。パーティーの真の目的は。
やがてニックの前に現れたギャツビーは、自ら生い立ちを語り始める。裕福な名家に生まれ、戦争で功績を挙げ、親を亡くして天涯孤独となった──よどみない告白に、キャラウェイは疑問を抱く。何か隠している。
一方、キャラウェイの親戚、デイジー・ブキャナン(キャリー・マリガン)とギャツビーの間には、秘められた過去があった。デイジーの夫の目を盗み、再び逢瀬を重ねる2人。しかし手に入らぬ愛を追うことで、完ぺきに見えたギャツビーの仮面が、少しずつはがれていく。
原作である米小説家フィッツジェラルドの代表作「グレート・ギャツビー」は、大戦後の脱力感、やり場のない虚しさと幻想を描く。シャンデリアに照らされ、きらめく豪奢な邸宅。天井にこだまする人々の歓声、狂乱をあおるジャズの響き。しかし皮肉なことに、舞台が輝けば輝くほど、孤独と寂しさが押し寄せる。
ギャツビーはどんな男か。ディカプリオは言う。「彼はどうしようもないロマンチストだが、同時に心がとてつもなく空っぽで、自分の人生に開いた穴を埋める何かを探し求めている」
ギャツビーが何層にもかぶった仮面──カネのよろいを着けた自信家が、時おり見せる戸惑い、迷い、虚勢。演技者・ディカプリオが無数の引き出しを開け、さまざまな表情を披露する。中でもクライマックス、怒りの沸点を越えた演技が素晴らしい。
宴が華やかであればあるほど、終わった後の虚しさは大きい。それが幻影であればなおさらだ。バズ・ラーマン監督は一つの時代を、一人の男を通し、冷めた視線で再現している。
「華麗なるギャツビー」(2013年、米国)
監督:バズ・ラーマン
出演:レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン、ジョエル・エドガートン
2013年6月14日、3D・2D全国公開。作品の詳細は公式サイトで。
記事提供:映画の森
* 記事内容は公開当時の情報に基づくものです。